被災したら確定申告!保存版「災害と税金」〈下〉

地震保険などで補てんされた額は差し引く必要があります。地方では「建更(たてこう)」と呼ばれる地震災害をカバーする「建物更生共済」に加入している人が多いですが、建更の共済金も扱いは保険金と同じです。

 

保険金額は住宅と家財と車、さらに災害関連支出のそれぞれから差し引きます。たとえば家財の損害額が100万円で、家財保険が150万円出た場合、差し引くのは100万円だけです。引ききれない50万円を、住宅や車の損害額から差し引く必要はありません。

 

保険金を差し引けば、雑損控除の額は小さくなりますが、地震保険や共済金による補償額は所得税の課税対象外ですから、「地震保険の保険金が下りた人は所得税がかかって確定申告すると損をする」ということはありません。

雑損控除額の計算式

自治体からもらった義援金や災害弔慰金、支援金、親戚などがくれた見舞金も所得税はかからないので、原則として損害額から差し引く必要はありません。ただし、社会通念上あり得ない額の場合は、見舞金とは認められず、贈与税がかかることがあります。

 

こうして出てきた額から、最後に所得の10%を差し引いた額が、雑損控除の実額となります。計算式にすると、以下の通りです。

 

雑損控除による控除額=住宅と家財と車の損害額+災害関連支出の額-保険金などで補填(ほてん)された金額-(所得額×0.1)……〈1〉

もうひとつの控除額の出し方

住宅などの損害額は小さかったが、災害関連支出が大きかった被災者を救済するため、雑損控除額にはもうひとつ、別の計算方法があります。大きな旧家が被災して一部が壊れ(=家の損害額は小さい)、家が大きかったので大量のブルーシートを購入して災害関連支出がかかったなどです。

 

雑損控除による控除額=災害関連支出額-5万円……〈2〉

 

雑損控除額を出すときは、〈2〉の式でも控除額を計算し、〈1〉の式と〈2〉の式の計算結果で大きい方の額を控除できます。ただし、繰り返し説明した通り、災害関連の支出はあくまで損害額を差し引いた額で、損害額と修理費を二重にカウントすることはできません。

所得税が戻ってくる目安

被災者の多くは住宅や家財の損害額のほうが大きく、〈1〉の式で計算します。住宅、家財、車の損害額に災害関連の支出を足した額から地震保険や建更の保険金を差し引いても、まだ所得の1割を超えていれば控除額はプラスになり、所得税が戻ってきます。

 

つまり確定申告をして雑損控除を受けるかどうかの大雑把な目安は、損害額と災害関連支出額の合計額が、保険金や共済金による補填分を差し引いても、年間所得の1割を超えているかどうかです。

 

逆に言えば、損害額が小さかったり、所得が多かったり、地震保険の保険金が多かったりなどの理由で、控除を受けられないケースもあります。年間所得から雑損控除分を差し引いた残りの課税所得には、当然ながら所得税がかかります。

雑損控除は繰り越せる

損害額が大きいと、雑損控除の控除額が前年の所得を上回って引ききれないことがあります。その場合、3年繰り越せばよいのです。「繰り越し」が3年ということは、被災した年から4年分の所得から差し引けることになります。

 

ただし、雑損控除は最優先で控除するのが原則です。

たとえば所得が500万円、雑損控除額が600万円あり、医療費控除などその他の所得控除が50万円ある場合、500万円の控除によって所得はゼロ、所得税もゼロとなりますが、すべて雑損控除による控除とされ、医療費などのその他の所得控除50万円は認められません。そのため翌年に繰り越せる雑損控除額は150万円ではなく、100万円となります。

 

前年に被災したが、家が工事中で修理費がいくらかかるかわからない、罹災証明書をとっていないなどの場合、当該年の確定申告は見送って次の年に改めてその年の分を申告すれば、さかのぼって雑損控除が適用されるわけです。

 

とはいえ、被災地の税務署は、災害の翌年の確定申告シーズンに災害対応をするため、相談はしやすいかもしれません。家の修理が終わっていなくても見積書を持って税務署に相談することなどをお勧めします。

持参した方がよい書類

最後に、税務署に出向いて申告や相談をする際、持参した方がよい書類を示します。

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