自宅で大地震に遭遇!対処方法「最新」の心得


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大地震が発生したら「机などの下に隠れなさい」「すぐにコンロの火を止めましょう」などと以前は言われていました。防災訓練などで身を隠した経験を持つ方は多いと思います。しかし、今の生活環境下では昔の常識が今の非常識ということも多いのです。自宅で大規模地震に遭遇した際、とっていただきたい最新の防災行動を紹介します。

自宅滞在時の大規模地震への対応(防災行動)とは!?

自宅で大規模地震に遭遇した際にどう行動したら望ましいのかについては、住まいのある地域の地震対策がどのぐらいなされているかによって異なります。
石やレンガ積みの建物が多い諸外国ではマグニチュード(M)5クラスの地震でも建物の倒壊や大規模損傷などの被害が生じることがあります。そのような国や地域ではM5規模の地震も注意対象です。
一方、日本では地震対策レベルが高いため、M5規模の地震ではほとんど被害が生じることはありません。

日本で注意が必要となるのは、震度6弱以上の揺れを伴う地震となります。

実際、2019年に起きた地震回数は以下の通りです。

  • 震度4:31回
  • 震度5弱:6回
  • 震度6弱以上:3回

震度4の地震はほぼ毎月、震度5弱の地震も2か月に1回は発生しています。
日本では注意すべきは、震度6弱以上と覚えておきましょう。

大きな揺れがきたら低くかがみこんだ姿勢を!

震度6弱以上の地震がきたとき取るべき行動は、その場で低くかがみこんだ姿勢を取ることです。地震がきたらテーブルなどの下に身を潜めるということを頭に浮かべる方も多いと思いますが、それは住宅の耐震性が劣っていたり防災対策が整っていなかったりしたころの話です。

震度6弱以上の大きい揺れに襲われたとき、移動は困難です。無理にテーブルの下に移動しようとすると、逆に転倒など負傷するリスクが増します。

  • 頭上から物が落下しない
  • 家具が倒れない

など2点の心配がないようにあらかじめ生活環境を整えた上、大きな揺れがきたときはその場にしゃがみこみ、体を小さくかがめた防御の姿勢をとることを心がけましょう。

昔と今では異なる地震発生時の行動

その場で低くかがみこんだ姿勢を取ること以外についても見ていきましょう。

コンロの火を止めるのは揺れが収まった後

料理などでガスコンロを使用中に大きな地震が発生した場合、以前ならコンロの火を止めることが推奨されていました。
しかし、今は大きな揺れが感知されたとき自動でガス供給が遮断されます。また機器によっては自動的に消火されるものもあります。
大きな揺れに襲われたとき動くことは不慮のけがを招きやすいため、コンロの火を消すのは揺れが収まってからと認識しておきましょう。

トイレ空間の耐震強度はさほど高くない

以前はトイレが安全と言われていました。推奨されたのは、トイレ空間が柱に囲まれた強度の高い空間となっているためでした。
しかし、これもいまは好ましくない行動です。揺れがきたときにわざわざトイレに移動しようとするとけがのリスクが増します。また、住宅の構造上、トイレ空間は柱で囲まれた空間であるとは限らず、耐震強度はそれほど高くありません。むしろ、揺れによってトイレの扉が開かなくなり、閉じ込められる危険性があるので注意しましょう。

マンション居住者は玄関扉を開けに行かない

マンション居住者に対して以前は大きな揺れがきたら玄関の扉を開けておくことが推奨されていました。地震の揺れによって玄関周辺の壁が変形して扉が開かなくなってしまうことに対する対処方法でした。
しかし今ではマンションに耐震玄関ドアが広く使用されるようになっています。耐震玄関ドアは大きな揺れでドア枠が変形してもしっかり開閉できるようになっています。
また、耐震玄関ドアが設置されていない場合でも、マンションには必ず2つ以上の避難経路が確保されています。ドアが開かなくてもバルコニーから隣接住戸などを通じて避難が可能です。その場にかがみこむことが基本でもあるので、無理して玄関扉を開けに行く必要はありません。

揺れが収まった後に心がけたい行動は⁉

次に自宅で大きな地震に遭遇したとして、揺れが収まった後に心がけておきたい防災行動をいくつか紹介します。

家の損壊状況を確認する

揺れが収まったらまず家の損傷状況を確認してくだい。詳しい損傷状況判断は建築士などの専門家でないと難しいですが、柱、壁、基礎に大きなひび割れがないかどうかを確認しておきましょう。大地震の後には余震が発生しやすいものです。家は最初の本震には耐えられても、本震で損傷が生じると、余震に耐えられない場合があります。
そのため、余震を考えて家に滞在すべきか、家を出て避難所などへ避難するべきかを判断することが必要です。家の損傷状況がその判断基準となります。

柱、壁、基礎などに大きなひび割れが確認できた場合、家を離れて避難することを優先してください。

居住地周辺の火災を確認する

次に、自宅や自宅以外の居住周辺で、火災が発生していないかどうかについて確認してください。近隣はもちろん、少し範囲を広げて気をつけましょう。大規模地震後は複数の火災があちこちで発生することがあります。普段と比較すると消火活動がすぐに開始されないこともあるのです。
火災情報の確認を怠ると、火災に取り囲まれて避難できなくなる恐れがあります。注意しましょう。

津波や都市洪水の発生を確認する

住まいが歴史的に津波や洪水が確認されている地域や河川や海岸に近い場合は、地震発生後すぐに津波や都市洪水について注意を払うことが大切です。
都市洪水は都市部で生じる洪水や浸水の総称で、大規模な河川決壊、排水機能が追い付かないことによる浸水などです。津波や洪水はいち早く避難を決断しなければいけない自然現象で、時間がカギを握ります。いざというときに備え、普段から自宅回りの津波や洪水情報の入手方法について確認しておくことが大切です。

避難のため家を離れるときはブレーカーを落とす

通電火災は大規模地震などで停電し、それが通電した際に発生します。1995年の阪神大震災で注目されるようになりました。阪神大震災の時は、神戸市内で起きた157件の建物火災のうち、原因が特定できた55件のうち33件が通電火災でした。

通電火災を防ぐには避難で家を離れるときに自宅のブレーカーを落としておくことです。最近は大きな揺れに反応して自動的に通電を遮断する感震ブレーカーがあります。感震ブレーカーにしておけば、地震時の通電火災をなくすことができます。

まとめ

地震への備えや防災は生活している地域環境や住宅環境によって異なります。まずは住んでいる地域や自宅建物の特性をしっかりと理解しておきましょう。

 

<執筆者プロフィル>
榑林宏之(くればやしひろゆき)
一級建築士(BAUMPLANNING一級建築士事務所代表)
中堅ゼネコン設計部を経て独立、一級建築士として活動。自然環境への取り組み(自然との共生)の一環として自然災害・防災(主に地震災害・防災)研究及び啓発活動を推進しています。

 

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