子どもをPTSDから守る!災害後に注意すべきこと


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災害時には子どもにもストレスがかかる

大災害に遭遇すると、命の危機を感じたり身近な人が亡くなったりなど、衝撃的な経験をします。それだけでなく、その後の避難生活なども加わると、誰しも精神的に大きなストレスを受けます。それが子どもならなおさらです。子どもの場合、その反応は行動に表れることが少なくありません。
子どものどのような行動に注意が必要なのでしょうか。この記事では子どもをストレスから守るためにできることを紹介します。

こんな行動が見られたら要注意

まずは子どもの年代ごとに、災害後にどんな行動が表れたら注意を払う必要があるのかをあげていきます。

幼児:赤ちゃん返り

幼児は赤ちゃん返りや、親のそばを片時も離れようとしない兆候に気をつけてください。一方で、それまでと違ってむずかる(泣いたりすねたりする)ことがなく妙に手のかからない状態であるときも、注意する必要があります。

小学校低学年:描く絵の変化

小学校低学年の場合、被災後に描く絵に変化が見られることがあります。たとえば「このうずにみんなが連れていかれたの」などとおしゃべりをしながら、頻繁にぐるぐるとうず巻きを描くようになる、人物を描いた上からぐしゃぐしゃと塗りつぶす、などの表現が増えたときは、特別な対応が大事です。

小学校高学年:過活動に注意

小学校高学年の場合、普段でも活動量が多いものですが、それが一段と高まるという変化が起こることがあります。「常に走り回っている」「友達と遊ぶ声が異様に大きい」などです。一般的なストレスへの反応として、元気がなくなったり落ち込んだりする様子をイメージするかもしれませんが、逆に過剰に動き回ったりテンションが高い状態が続いたりなどが目に付くことがあります。自分をコントロールする力が弱まるケースもあるためです。

中高生:燃え尽き症候群に陥ることも

中高生になると、避難所運営や復興活動にボランティアとしてかかわる人も出てきます。しかしそういった活動を睡眠や食事の時間を削ってまで行っていたら要注意です。中高生のパワーは「自分がみんなの役に立てる」という気持ちとともに発揮されます。それだけに自分の体力と心理的エネルギーの限界に気づくことなく活動にのめりこみ、結果的に突然バーンアウト(燃え尽き状態)を起こすことがあります。
このようなストレス行動に気づいたとき、親や身近な大人ができることをお伝えします。

身近な大人ができること


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・幼児には
しっかり抱きしめる、手をつないで寝るなど、体のぬくもりを感じる時間をとることがおすすめです。それと同時に「もう大丈夫だからね」「ここは安全だよ」といったメッセージを、ゆっくりと穏やかな声で繰り返し伝えてください。

・小学校低学年には
子どもがおしゃべりしながら絵を描いているときは、あえて問いかけをせずに見守ってください。話を引き出しすぎない、聞きすぎないことが大切です。子どもの言葉をさえぎることもせずに、子どもが感じた怖さを受け止めつつも「今はもう守られている」ことをしっかり伝えてあげてください。

・小学校高学年には
子どもが普段よりも活発に活動しているときは、安全な枠を作ってそのなかで思いっきりストレスを発散させてあげてください。たとえば縄跳び100回チャレンジなどを企画して、子どもから「やった!」という言葉が自然に出るような場面を作ってみましょう。

・中高生には
中高生のバーンアウトを防ぐためには、彼らに「行動を制限しよう」とアドバイスすることが重要です。年代的に親の言うことを聞かないかもしれません。そのような場合は大人のリーダーとも連携し、活動のマネジメントを行って「継続して良い活動をするためには、しっかり休んで食べて健康でいることが大切である」と指導する必要があります。

専門機関を受診する目安

こういった子どもの行動の変化に気付いたとしても、それが災害後の非日常生活における正常反応なのか、それとも専門機関を受診する必要があるのかを判断するのは難しいと思います。そのような状況では避難所や地域を巡回する保健師や臨床心理士といった心理職、医療関係者と気軽にコミュニケーションをとっておくことをおすすめします。
医療関係者を見かけたら5分程度でも良いので、被災前の様子や今の言動などについてたわいないエピソードなども含めてお話ししてください。おしゃべりする感覚で構いません。そういった情報を積み重ねておくと、その医療関係者は受診の見極めに重要な変化に気付くことができ、必要なときに受診を勧めてくれるでしょう。つまり「変化の兆し」を共有できる医療関係者とつながっておくことが大切だと考えます。

まとめにかえて


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「なぜ私だけが生きているのだろう」
子どものそんなつぶやきを聞いたら、あなたは少なからず動揺することでしょう。そして慌ててその言葉をさえぎったり、「みんなの分まで頑張ろう」などと励ましの言葉をかけてしまったりするかもしれません。
でも、そのつぶやきは多くの死を目の前で体験した「生き残った罪の意識(サバイバーズ・ギルト)」から発せられたものかもしれません。そのような場合、子どもの言葉を受け止めた上で、ただ「あなたが生きていてくれてうれしい」と伝えてください。
災害後に一番伝えてあげていただきたいのはこの言葉です。この言葉は子どもに対してはもちろんのこと、子どもを守るあなた自身の心の健康のためにも重要だと考えます。

 

<執筆者プロフィル>
本多公子(ほんだきみこ)
臨床心理士、教育学修士
消防庁 緊急時メンタルサポートチーム専門家

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