広がる「グリーンインフラ」…自然の力を治水に生かす

写真説明:側溝に砂利を詰め込んだ「バイオスウェル(雨の道)」。施設内に降った雨水が集まってたまり、地中にゆっくりとしみ込んでいき、急な大雨が降っても、施設が水浸しになるのを防ぐ(2023年8月4日、東京都町田市で)

頻発する豪雨で注目

豪雨被害が深刻化する中、自然が持つ治水機能を防災に活用する取り組みが広がっている。コンクリートで固めたダムや堤防など従来型の「グレーインフラ」に対し、「グリーンインフラ」と呼ばれる手法で、緑豊かな街づくりにもつながるとあって注目を集めている。

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雨水がゆっくりしみこむ「レインガーデン」

映画館や飲食店が並び、家族連れでにぎわう東京都町田市の複合商業施設「南町田グランベリーパーク」。その一角に小石を敷き詰め、様々な草木を植えた植栽帯がある。「レインガーデン(雨の庭)」と呼ばれるグリーンインフラの一つだ。

くぼんでいるため、施設内に降った雨水が集まってたまり、地中にゆっくりとしみ込んでいく。急な大雨が降っても、施設が水浸しになるのを防ぐ仕組みで、地中の雨水は時間をかけて、近くの河川に流れ込む。

写真説明:施設内から集まる雨水を一時貯留し、地下に浸透させる「レインガーデン」(2023年8月4日、東京都町田市で)

溝に砂利を詰め込んだ「雨の道」も

施設の外周には、深さ70cmの溝に砂利を詰め込んだ「バイオスウェル(雨の道)」もあり、雨の庭と同じ機能を担う。運営会社の小川卓男・グランベリーパークグループ長は「施設内で雨水があふれたことはなく、景観も良くなり、一石二鳥だ」と笑顔で話す。

熊本では田んぼダムが拡大

熊本県では2020年夏の九州豪雨を受け、小さな穴を開けた調整板を水田の排水口に取り付け、川に流入する水を減らす取り組みが進む。水田に雨水を一時的にためることから、「田んぼダム」と呼ばれ、2023年3月末時点で457haに拡大している。

従来の「グレーインフラ」だけでは氾濫を防げない

グリーンインフラの導入が各地で進む背景には、突然の局地豪雨が各地で頻発し、豪雨被害が激甚化していることがある。

特に市街地では、舗装された路面に降った雨が地中に浸透せず、河川や下水道にそのまま流れ込む。川に排水しきれず雨水が地上にあふれる「内水氾濫」が相次ぎ、グレーインフラだけでは被害を防ぎきれなくなっている。

国が半額補助

そこで国は2021年、自治体向けにまとめた浸水対策の指針で、既存の排水施設の活用とともにグリーンインフラの導入を提言。道路の緑化や緑地整備に取り組む自治体や企業に事業費の半額を補助しており、毎年約40団体が利用している。

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