南海トラフ地震の津波想定域の3割が2050年には「限界集落」に!

説明:南海トラフ地震の津波浸水エリアの高齢化率(2050年時点)

住民同士の避難支援も「限界」

30年以内に発生の恐れがある南海トラフ地震での津波被害が予想される地域のうち東海から九州の187市町村では、約3分の1の58市町村が2050年に浸水エリア内の住民の高齢化率が50%以上になる見通しであることが読売新聞の調査でわかった。50%は共同生活が困難な「限界集落」の目安で、住民同士の避難支援が難しくなる恐れがある。

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東大の監修で読売新聞調査

南海トラフ地震は、静岡県沖から宮崎県沖に延びる南海トラフを震源とする地震。最大マグニチュードは9程度。30年以内の発生確率は70~80%で、死者・行方不明者は最大約23万1000人と想定されている。

調査は、国土交通省が国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口に基づき公表した人口と、津波浸水エリアのデータを利用。静岡から鹿児島までの11県の浸水エリア(約1800㎢)について、2020年から2050年の人口減少率や、65歳以上の割合を示す高齢化率の推移を分析した。手法については、東京大の大原美保教授(災害リスク軽減学)の監修を受けた。

浸水想定の187市町村を分析

分析した浸水エリアは187市町村にまたがり、エリア内の高齢化率が50%以上となる市町村は、2020年時点の10から2050年には58に増える。2050年時点で最も高い市町村は、三重県南伊勢町と大分県姫島村の71・9%。浸水エリア全体は39・2%(全国平均37・2%)。

2020年から2050年にかけての高齢化率の上昇幅は、日本全体では8・3ポイントだが、浸水エリアでは10ポイント以上あがる市町村が半数を占める。

人口減も進む

人口減のスピードも速い。この間の人口減少率は全国では18・7%だが、エリア内は23・4%だ。これに伴い、高齢者の避難支援を担う「生産年齢人口(15~64歳)」も減少する。2050年時点で浸水エリアの高齢者1人に対し生産年齢人口が1人を下回る状態になるのは、88市町村の見通しだ。

政府は津波避難タワーの整備や早期避難の徹底で、犠牲者を想定から8割減少させる目標を掲げるが、大原教授は「人口減と高齢化を考えれば、中長期的に浸水エリアの住民を高台などの安全な地域に誘導していく必要がある」としている。

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