導入から4年…仕組みが複雑、コロナで周知不十分
想定震源域が東海から九州に及ぶ南海トラフ地震の発生可能性が高まった時、津波に備えた事前避難などを促すために気象庁が発表する「臨時情報」の制度導入から4年がたった。仕組みが複雑なうえ、新型コロナの流行で十分に周知できなかったことから認知度が低迷しており、関係自治体は、講習会を開くなどして啓発活動に力を入れている。
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南海トラフ地震とは
南海トラフ地震は、静岡県の駿河湾から宮崎県沖の日向灘に延びる南海トラフ(海底の溝)沿いで、今後30年以内に70~80%の確率で起こると想定される。最大マグニチュード(M)は9程度。死者・行方不明者の試算は最大約32万人とされる。
3年半ぶりの勉強会
「臨時情報が出た時の対応を突き詰めると、『事前避難』と『日頃の備えの再確認』です」。東北大の福島洋准教授(地震学)は2023年5月、静岡市で開かれた臨時情報の勉強会で市民ら約200人に訴えた。
静岡県と県内の大学などの主催で、臨時情報をテーマにした勉強会は3年半ぶりの開催となった。金嶋千明・県地震防災センター所長は「災害に備えるには、まず市民らが臨時情報を知ることが重要だ」と話す。
臨時情報がひとたび出されると経済への影響も大きく、県は事業者向けに臨時情報が出された場合の事業継続計画(BCP)作成の講習会も検討している。
写真説明:臨時情報のポイントなどを解説する福島准教授(202年5月、静岡市の静岡県地震防災センターで)
南海トラフ地震臨時情報とは
臨時情報とはどういう制度なのか。
過去の南海トラフ地震では、想定震源域のうち東西どちらか半分の領域で「半割れ」と呼ばれる地震が起き、時間を置いて残り半分でも地震が起きるケースがあった。こうした知見を基に、先発の地震が起きた後、大きな被害が出ていない地域で後発地震に備えようというのが、臨時情報の目的だ。
■東側でM8の地震(半割れ)が起きた場合のイメージ