災害時の停電に「水素」と「船」で電力をまかなう

東日本大震災の発生直後、複数の発電所が運転をとめ、首都圏でも広域停電が起きた。これを教訓に、神奈川県内でも災害時の電力確保策の模索が続く。10年前にはなかった新たな選択肢も登場している。キーワードは「水素」と「船」だ。

川崎・行政主導の水素戦略

京浜工業地帯の中核を担う川崎市臨海部では、集まる企業が必要電力の自前調達を目指してきた。発電能力は2020年時点で、首都圏の一般家庭消費電力を超える約830万kwに達している。

ここで今、「水素エネルギー」が脚光を浴びている。水素は輸入のほか、廃プラスチックの分解、水の電気分解などで入手できる。気体や液体の状態で、燃料電池に貯蔵することも可能だ。

こうした特徴に、「災害時に役に立つ」と目をつけたのが、川崎市のスマートシティ戦略室の課長だった高橋友弘・国際戦略推進部長。東日本大震災では、川崎でも工場や住宅など87万軒が停電したが、民間企業と連携し、ノウハウを取り入れることで、将来の大規模災害に備えようと動き、2015年に「川崎水素戦略」を策定した。

消費電力の3割をまかなうホテル

その結晶の一つが、沿岸部の「川崎キングスカイフロント 東急REIホテル」(川崎区)だ。昭和電工川崎事業所(川崎区)が廃プラから生成した水素によって生み出す電気と熱で、ホテルで使うエネルギーの3割をまかなっている。停電時も、照明や給湯を維持し、スマートフォンの充電などもできる。

写真説明:エネルギーの3割を水素で生み出される電気と熱でまかなうホテル「川崎キングスカイフロント 東急REIホテル」。水素エネルギー活用した植物育成装置でリーフレタスが栽培されている(川崎市で)

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