触って浸水場所、深さが分かる!視覚障害者用ハザードマップ


写真説明:国立長野高専の藤沢教授が制作している視覚障害者用ハザードマップ。右の板は建物や道路など、左の板には浸水する深さを彫っている

国立長野高専の藤沢義範教授が制作

国立長野高専(長野市徳間)の藤沢義範教授(福祉工学)が、視覚障害者用のハザードマップを制作している。凹凸があり、触って浸水する地域や深さを確認できるように工夫しており、藤沢教授は「ハザードマップが見られず困っている人の力になりたい」と意気込んでいる。

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マップは厚さ5mmのアクリル板2枚を並べて同時に使う。1枚は道路や建物などが彫られ、別の1枚には浸水深を表す線を南北に引いている。線の間隔が狭まると深くなることを示している。現在、長野市のしなの鉄道北長野駅周辺の地図を基に改良を重ねている。

全盲の男性からの相談がきっかけだった

制作のきっかけは、社会福祉士で全盲の池田純さん(長野市)から相談を受けたこと。池田さんは2019年10月に台風19号が上陸した際、自宅で不安な夜を過ごした。自宅は無事だったが、ハザードマップの必要性を痛感。点で絵図を描く「点図」を制作したが、どの地域が浸水するかがわからず悩んでいた。

相談を受けた藤沢教授はまず板1枚に建物や道路などを彫ったハザードマップを制作した。ただ、情報量が多くなり、何が彫ってあるのかが理解しにくくなった。池田さんらに意見を聞きながら、アクリル板を2枚並べることにした。

写真説明:視覚障害者用のハザードマップを手にする藤沢教授(長野市で)

全国各地に展開できるよう開発中

現在は全国各地のハザードマップを制作できるようプログラムの開発を進めており、藤沢教授は「各地で災害が起きる中、長野も例外ではない。触って分かる地図があれば避難訓練もできる」と話す。

他都市の視覚障害者向けの取り組み

視覚障害者ら「災害弱者」をどう避難させるか。各地で取り組みが広がっている。

土砂災害ハザードマップの音声CD…広島県呉市

広島県呉市の市民らでつくる朗読ボランティア「カリオン」は2019年、土砂災害ハザードマップの情報を音声で吹き込んだCDを制作した。市視覚障害者協会に所属する約35人の自宅周辺の危険箇所や、最も近い避難所などを音声で案内する。

同協会長の鎌倉典子さんは目の難病で視力は0・03以下のため、2018年の西日本豪雨時にハザードマップを確認できなかった。鎌倉さんは「晴眼者にはハザードマップを見ることは当たり前でも、私たちにとっては大変なこと」と指摘する。

防災ブックの音声CD…京都府城陽市

京都府城陽市の朗読ボランティア「陽声」も2020年2月、市が発行する防災ブックの情報を吹き込んだCDを制作。災害の危険性や近くの避難所を地域ごとに案内している。音声は同市のホームページに掲載され、誰でも聞くことができる。代表の荘司蓉子さんは「別の地域でも取り組みが広がればうれしい」と期待する。

視覚障害者に情報提供などを行っている社会福祉法人「岐阜アソシア」(岐阜市)部長の棚橋公郎さんは「危険性を知ることが早めの避難行動に結びつく。視覚障害者が危険性を理解できたかを検証し、具体的な避難計画を作成してほしい」と呼びかけている。

(読売新聞 2021年7月7日掲載 松本支局・村上愛衣)

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