デジタルツインの防災活用加速…都市を仮想空間に再現し被害を予測

高精度なシミュレーション可能

1995年の阪神大震災では、家屋の倒壊などで6434人が犠牲になった。甚大な被害を教訓に、国や研究機関は事前に被害を予測できるシミュレーション技術を進化させてきた。現在は仮想空間に現実の都市をそっくり再現した「デジタルツイン(双子)」の活用が盛んになっており、予測の高精度化による被害軽減に期待がかかる。

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「神戸市×理研×ドコモ」の取り組み例

震災後、建物の耐震化が進んだことで、今後は家屋倒壊による死者は減るとみられる。一方で、避難時の混乱をどう防ぐかという課題が浮上している。

こうした課題の克服を目指し、神戸市は理化学研究所、NTTドコモとともにデジタルツインを活用してスムーズな避難誘導や帰宅困難者対策につなげるプロジェクトを始め、2023年1月に詳細を発表した。

道幅や信号の場所、建造物など市が提供するデータを基に、理研のスーパーコンピューター「富岳」を使って市内の繁華街などの「双子」を仮想空間に構築する。そこに人の滞在や移動に関するデータを取り込んで日中や夜間の街の状態を再現し、南海トラフ地震などの災害時に人々がどのように避難するかを予測するという。


写真説明:理化学研究所のスーパーコンピューター「富岳」

混雑が起こる危険箇所を事前に洗い出すのが目的で、神戸市政策課の竹村健係長は「明らかになったリスクは、自治体の避難計画や都市計画の中で改善を図る。市民への啓発にも活用し、災害に強いまちづくりにつなげたい」と説明する。

ツイン化の利点は、現実と「うり二つ」の都市で精度の高い災害シミュレーションを行えることにあり、国も有効性に注目する。

国によるプロジェクトの例

国土交通省は普及に向けて2020年から、日本各地の都市を仮想空間で3Dモデル化して公開するプロジェクト「PLATEAU(プラトー)」を推進している。

建物や道路の場所などが示された「都市計画基本図」、建物の高さや形などが含まれる「航空測量データ」、建物の用途や構造、利用状況を5年に1度調べる「都市計画基礎調査」の3つを組み合わせて作製。データは多くの自治体が元々保有しているもので、比較的短期間で作ることができるという。

横浜や大阪も…再現面積は「世界最大規模」

これまでにツイン化されたのは横浜市、大阪市、広島県福山市、熊本市など56都市で、総面積は約1万㎢にも上る。国交省都市政策課の担当者は「世界最大規模だ」と説明する。

◆都市のデジタルツイン化(イメージ)

これらは公開データとして提供され、自治体や企業、研究機関などが活用している。例えば福島県郡山市では、ツイン都市で行われた河川氾濫のシミュレーション結果を市民に周知し、浸水時に上層階に逃げる「垂直避難」が有効な建物を絞り込むのに役立ててもらっているという。

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