地震・被災地を助けたい! コロナ下の災害ボランティア 

炊き出しやがれきの撤去――。大規模地震などの発生時、被災地支援にボランティアは欠かせない。義援金や物資を送る支援も重要だ。だが、サポートしたいという思いが空回りすると、被災者の足を引っ張りかねない。新型コロナウイルスによる制限もある中、求められる支援のあり方を架空のシナリオで確認する。

シナリオ1 ボランティア 現地へ…準備

倒壊した家屋、広範囲に発生した土砂崩れ――。震度6強の直下型地震に見舞われた町の様子が連日、テレビ画面に映し出される。

 

「ボランティアに行こう」。同じ県内に住む会社員の太郎(32)は、居ても立ってもいられなくなり、現地入りの準備に取りかかることにした。幸い、住む地域は震源から離れ、自宅も大きな被害はない。

 

「新型コロナの影響で受け入れを制限しているんじゃない」。妻の花子(30)に指摘され、太郎は被災地の町のサイトを調べたが、情報は見当たらない。電話をかけても、つながらなかった。

 

「電話は迷惑よ。職員は忙しいでしょ」。とがめられ、ネット検索をすると、県内からは受け入れていることが、被災地支援団体のサイトでわかった。週末には専用バスが現地まで運行している。

シナリオ2 暑い中の作業 ダウン…土砂の撤去

「言葉遣いに気を付けて」。週末の朝、太郎が現地の災害ボランティアセンターで受け付けを済ませると、念を押された。倒壊した住宅を「がれき」などと言うと、被災者を傷つけてしまうという。現地での活動の心得を聞き、改めて身が引き締まる思いだ。

 

割り当てられたのは、土砂崩れで家屋の中に流れ込んだ土砂の撤去だった。スコップを手に意気込んで土を掘る。

 

だが、午後には気分が悪くなっていた。持参した水を口にしながら作業したが、秋にしては気温が高く、汗が額を伝う。住民に支えてもらって日陰に入り、休んだ。「マスクを着けての作業が体の負担になったみたいだね」。住民の優しい言葉が胸に響く。

 

夕方、作業を終えた太郎は専用バスに揺られて帰途に就いた。「助けに来たのに、助けられてしまった」

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