被災地へのボランティアは募集状況の確認から

写真説明:最寄りの社会福祉協議会でボランティア保険に加入できる(東京都豊島区で)

「自己完結」が原則 保険加入も

大規模地震などが発生し、現地の厳しい被害状況が伝えられると、被災者のために何かできないかという気持ちが高まる。その思いを被災地支援にしっかりとつなげるため、心掛けるべきことは何か。まず現地入りの準備について考える。

 

ボランティアは道内在住者に限ります――。2018年9月の北海道地震で被災した厚真町では、社会福祉協議会(社協)がボランティアの受付窓口となる災害ボランティアセンターを開設。フェイスブックに専用ページを設け、募集を始めた。だが、宿泊施設の不足などから、募集を9月いっぱいは道内在住者に限定した。担当者は、「当初はどれくらいの人が参加するか見当がつかず、混乱を避けたかった」と振り返る。

 

山間部などの被災地では、重機を扱えないと復旧作業に当たれないといった理由で、一般のボランティアを募集しないことがある。ボランティアセンターが開設されるまでに時間を要する例もある。全国社会福祉協議会(全社協、東京)の地域福祉部副部長、小川耕平さんは「受け入れ態勢が整っていないのにボランティアが詰めかけるケースは多い。募集状況について確認してほしい」と呼びかける。

 

募集状況や必要な装備、被災地までの専用バスの運行状況などの情報を収集するには、全社協のサイトが役立つ。被災地の災害ボランティアセンターのフェイスブックなどを紹介している。「Yahoo!ボランティア」や、被災地支援のNPO法人などのサイトも参考になる。

 

新型コロナウイルスによる受け入れ制限についても確認をしたい。2020年7月の九州豪雨では、熊本県の自治体などがボランティアを県内在住者に限定した。

 

被災地に行く際には、時期を考えたい。ボランティアの参加者数は土日や祝日が多い。会社でボランティア休暇が取得できる人などは、平日の参加を検討してもいい。

 

災害ボランティアは、自分のことは自分でする「自己完結」が原則だ。事前に食料や飲料水を用意したり、ホテルなどの宿泊先の確保をしたり、スーパーなどの再開状況を把握したりするのも大切だ。

 

ボランティア先でけがをしたり、物を壊してしまったりする場合に備えるボランティア保険は、自宅の最寄りの社協のほか、災害発生時は全社協のサイトから加入できる。全社協が窓口となる保険の年間保険料は350円から。

 

「同じ都道府県内から行くとしても、新型コロナの感染リスクはゼロではない。対策をしてから向かってほしい」。NPO法人「全国災害ボランティア支援団体ネットワーク」(東京)の代表理事、栗田暢之さんは呼びかける。同法人は6月、コロナ禍でのボランティアに関する指針をサイトで公表。「レンタカーや自前の車を確保」「現地入り前は、在宅勤務の徹底など可能な限り感染を防ぐ措置を取る」ことなどを挙げる。

ニーズは発生直後だけではない

「コロナの影響でボランティアにすぐに行けないのであれば、先々の参加を検討しては」と、一般社団法人「ピースボート災害支援センター」(東京)の理事、小林深吾さん。発生直後に手伝う「緊急支援」のほか、仮設住宅に移ってからの「復旧支援」、生活再建を手伝う「復興支援」があるという。

被災地に関する報道が減るとボランティアの数も減少しがちで、小林さんは「自分ができるものを探し、息の長い支援を心がけて」と話す。

 

◆現地入り準備の3か条

▽ボランティアの受け入れ制限など情報収集

▽食料や交通手段など確保

▽保険に事前加入

(読売新聞 2020年10月14日掲載 「防災ニッポン 地震・被災地支援」①)

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