心身に影響する「災害ストレス」PTSDもあり長引くなら専門家を

 

その後復旧・復興がうまく進まずに大きなストレスを感じる「幻滅期」がやってくる。岡山の女性もこの時期に発症したとみられる。さらに復興が進む「再建期」に入っても生活が立て直せないと気持ちが不安定な状態が続く。こうした症状が続くと、医師や保健師などへの相談が必要だ。

◆災害後に起こりやすい被災者の心の動き

同センターが西日本豪雨から約半年後の2019年1~2月に岡山県倉敷、総社両市の仮設住宅に住む3662人に健康状態を尋ねたところ、災害時を思い出したり夢に見たりする人は約3割の1164人に上った。

同センターの岡崎翼医師は「今でもつらい思いを抱えている人は多い。親身になって話を聞いてあげるなど、受け止めてくれる人がいる安心感が早期の回復につながる」と話す。

家族や友人 大きな役割

災害ストレスは、1995年の阪神大震災でPTSDを発症する被災者が多く出たことから注目された。災害直後の急性ストレス障害(ASD)や避難の長期化で発症しやすくなるうつ病なども問題となり、東日本大震災(2011年)や熊本地震(2016年)など大規模な災害が起こるたびに被災者の心の問題に関心が集まるようになった。

 

治療法などの研究も進む。不安やパニックなど緊張した状態が続く場合、ゆっくりと深呼吸を繰り返すことが効果的だとわかってきた。また被災者が心の内を話すことで、不安や恐怖の感情が徐々に取り除かれていく。PTSDと診断され、専門的な治療を受けた患者の8割が治るようになったという。

 

国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所の金吉晴所長は「専門的な治療以外にも、被災者の話を聞き、家事を手伝うなど生活をサポートする家族や友人が大きな役割を果たしている」と話す。

 

(読売新聞 2020年6月28日掲載「減災」 科学医療部・長尾尚実)

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