写真説明:2011年3月11日午後5時47分撮影(岩手県山田町付近)
地震を想定したマンションの避難訓練に参加した。訓練開始の放送を聞いてエレベーターホールに集合すると、「災害時は住民同士で助け合いましょう」という呼びかけが流れてきた。
多くのマンションでは、住民同士の交流の機会がほとんどない。だが、不動産管理会社「東急コミュニティー」が2017年に行ったアンケートでは、「災害時に近隣世帯を助けたい」と答えた人は約8割もいる。災害時には、マンションでも「共助」が生まれるものだとわかり、少し安心した。
というのも、東日本大震災の被災者を取材して、共助の大切さを実感したからだ。「近所の人が『津波が来る!』と声をかけてくれたので一緒に逃げた」「身を寄せ合って寒さをしのいだ」――。市町村や消防などの「公助」が届かない時、生き抜くには住民同士の共助が必要なのだろう。
わが家にも共助の手が及ぶのだろうか? 「マンションコミュニティ研究会」代表の広田信子さんに相談すると、「『あの人は大丈夫かな?』と、心配してもらえる人間関係を作っておくことが大切です」というアドバイスをもらった。
長男には同学年の友だちがいるし、妻にはママ友がいるので、誰か気にかけてくれそうだ。私自身は管理組合の理事だが、心配した誰かが訪ねてきてくれるかというと心もとない。肩書でなく、もっと個人的な人間関係が必要な気がする。
広田さんが「人間関係作りの第一歩」と勧めてくれたのが、住民で作るサークルへの参加だ。自分のコミュニティーのメンバーの安否は気になるものなので、面倒見のいい人やメンバー同士が「あの人は大丈夫だろうか?」と心配になって、部屋を訪ねてきたり手助けしてくれたりするという。
東日本大震災からあと4か月半ほどで10年。自宅に水や食料は備蓄しているが、足りないのは人間関係のようだ。まず、マンション周辺の清掃活動をするグループに参加して、顔と名前がわかる関係を作りたい。
(読売新聞 2020年10月25日掲載 生活部・吉田尚大)
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