乳児の場合、ミルク類や市販の離乳食、紙おむつなどが、家に十分にあるか常に確認しておきたい。冨川さんは、「普段、家族で出かける際はトートバッグなどにこうした物を入れておくので、災害時は量を増やすだけで、乳児用の非常用持ち出し袋になります」と助言する。
小学生や幼稚園児などは、学校や習い事などで親と離れている時間が増えるため、その場合の備えが重要だ。
「一人でも臨機応変に動ける判断力をつける必要がある。安全確保の行動を教えるだけでなく、行動の具体的な目的を理解させることが大事」。一般社団法人「防災教育普及協会」(東京)の教育事業部長、宮崎賢哉さんは指摘する。
例えば、「地震の際はテーブルの下に隠れる」とだけ教えると、テーブルがない部屋に一人でいた場合、戸惑う。頭部などを守るためだと理解していれば、落下しそうな物から離れるといった対応ができる。こうした判断力は、防災教育用カードゲームやボードゲームでも養える。ネット通販などで購入できる。
写真説明:「災害時の判断力を紙芝居形式で養えるカードゲームもあります」と話す宮崎さん
被災後、親子で連絡を取り合える仕組み作りも必要だ。学校や塾、会社など、よく行く場所の電話番号をまとめたメモを共有したり、子どもに災害用伝言ダイヤル「171」や公衆電話の使い方を教えたりしたい。
心理的なショックに
災害時、子どもが受ける心理的なショックは大きい。様子の変化には留意したい。夜間に眠れず頻繁に起きたり、ゲームに過度に没頭したり、好きだったものへの関心を急になくしたりと、災害前と異なる行動が見られたら注意が必要だ。
武蔵野大教授(臨床心理学)の藤森和美さんは、災害時は誰もがストレスを抱える可能性があることを、普段から親子で語り合っておくよう勧める。「子どもは自分が傷ついていることを言葉にできず、『みんなが大変な時に弱音を吐いてはいけない』と我慢しがち。『災害時は怖くて眠れないこともある』などと知っていれば、自責の感情によるストレスを低減できる」と話している。
◆子どものための備え3か条
▽年齢に応じた備蓄
▽判断力をつけさせる
▽被災時の変化に注意
(読売新聞 2020年11月14日掲載 「防災ニッポン 地震・災害弱者」おわり 生活部・大郷秀爾、山村翠、梶彩夏が担当しました)
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