同市は、障害者ら避難時にサポートが必要な「避難行動要支援者」の情報を、本人の同意を得て自治会などに提供。各人の避難方法などを事前に決める「個別計画」も、自治会などが福祉の専門家と策定し、防災訓練には障害者らも参加する。神田さんは支援してもらいやすいよう、重量の軽い車いすを準備した。「計画策定で自分の防災意識もさらに高まった」と話す。
災害対策基本法は、市区町村に避難行動要支援者の名簿作成を義務づけ、国は指針で、個別計画の策定が望ましいとする。だが、ほとんどの自治体が名簿を完成させたのに対し、全員分の個別計画が策定された自治体は1割強にとどまる。
別府市の取り組みを監修した同志社大教授(福祉防災学)の立木茂雄さんは「個別計画を早急に作るべきだ。防災訓練に参加してもらうなど、交流も大切だ」と指摘する。
災害は外出先でも起きる。障害者がいたら、マスク着用など新型コロナウイルスの感染防止に留意しながら、まず声をかけることが重要だ。必要な配慮や支援などは一人一人違う。それを記入したヘルプカード=写真、愛知県瀬戸市提供=を持っている場合もあり、確認したい。
日本介護福祉学会長の太田貞司さんは「障害者は災害時、健常者以上に不安が大きい。声をかけるだけで安心につながる」と話す。
◆避難誘導や避難所での支援の主なポイント
(広島県障害者社会参加推進センター「防災ガイド」などを基に作成)
→高齢者 適度に体動かす
災害時のストレスなどで血圧が高くなる「災害高血圧」は、脳卒中や心筋梗塞(こうそく)の引き金になり得る。日中、適度に体を動かし、夜に十分な睡眠が取れるようにしたい。動かないと、全身の機能が低下する「生活不活発病」にもつながる。口腔(こうくう)ケアがおろそかになると、口内の菌が体に悪影響を及ぼす恐れも。歯磨きができない場合はガーゼなどで歯をこする。
→高齢者 できるだけ在宅避難
避難所生活は心身への負担が大きく、できるだけ在宅避難にしたい。温められるレトルト食品などの備蓄を徹底し、介護が必要だったり持病があったりする場合は、災害時に備えて事前にケアマネジャーや主治医に相談しておく。
遠方に老親がいる場合は、帰省した際にハザードマップを一緒に見て危険性を確認する。実際に避難経路を歩くなどするといい。
→子ども 避難ルートの確認
地震発生後に一時的に避難する公園などまで、試しに非常用持ち出し袋を持って、子どもと一緒に行ってみる。小学生や保育園児などにとっては避難ルートを知ることができ、乳幼児であれば、負担がないかの確認になる。
災害による子どもの精神的なショックは大きい。避難所などでは、睡眠中にうなされるなど、普段と異なる様子がないか注意する。
(読売新聞 2020年11月12日掲載「防災ニッポン 地震・災害弱者」生活部・大郷秀爾、福島憲佑、山村翠、梶彩夏が担当しました)
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