写真説明:岩手県陸前高田市の東日本大震災津波伝承館で、被災した消防車両から津波の破壊力を学ぶ修学旅行中の中学生たち
津波の爪痕と復興を肌で感じる
東日本大震災の被災地を修学旅行で訪れる学校が増えている。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、行き先を首都圏などから、感染者が比較的少ない東北に変えるケースが多い。2021年3月の震災10年を前に、被災地では「震災の記憶の風化防止につなげたい」と、誘致に力を入れている。。
30㎝でも巻き込まれ流される…
「30cmの津波でも、速い流れに人が巻き込まれ流される場合があります」。20年11月4日、岩手県陸前高田市の「東日本大震災津波伝承館」を修学旅行で訪れた宮城県角田(かくだ)市立角田中学校の生徒121人は、解説員の説明に驚きの声を上げた。
同校は、感染防止に加え「津波の爪痕や復興の様子を肌で感じてもらえる」との理由から旅行先を例年の関東から変えた。内陸の角田市は震災で震度6弱の揺れに襲われたが、津波の被害はなかった。3年の男子生徒(15)は「培ってきたものを全て壊してしまう津波被害は悲惨だ」と話した。
伝承館は19年9月に開館、津波の教訓や歴史を伝える。今年度の修学旅行や校外学習での来館は予約を含め215校の1万人余り、昨年度の約8倍に。大半は東北の学校だが、関東からの来訪もある。熊谷正則副館長は「展示解説を充実させ、修学旅行生を定着させたい」と語る。
例年首都圏9割 コロナ下で様変わり
近畿日本ツーリスト東北によると、東北6県の中学校の修学旅行先は例年、9割以上が首都圏。20年は4割が中止、6割は近隣県に変更した。岩手県観光協会は変更先として「被災地への関心が特に高い」と指摘する。被災当時の教室が残る宮城県気仙沼向洋高校の旧校舎(震災遺構・伝承館)には20年9、10月、前年同期の2倍以上の70校が訪れた。
東京電力福島第一原発事故で被災した福島県では、官民でつくる福島相双復興推進機構などが学校を誘致している。復興状況を直接見聞きしてもらい、風評被害の払拭(ふっしょく)や交流人口の拡大を狙う。
11月上旬には福岡市の高校の生徒約400人が双葉町の伝承施設などを見学した。同機構の担当者は「若い世代に福島への理解を深めてほしい」と話す。
(読売新聞 2020年11月15日掲載)
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