コロナ 不確かな情報に惑わされない方法

写真説明:トイレットペーパーが売り切れて空になった陳列棚(2月29日、福岡市で)=尾崎孝撮影

 

あるドラッグストアチェーンでは、今年2月頃に始まったトイレットペーパーの品薄状態が、3か月ほど続いた。「中国産が多く、不足する」というデマの影響だ。1人が購入できる個数を制限したが、入荷してもすぐに売れ、陳列棚に常に並ぶことはなかった。店頭の貼り紙で入荷しないことを知らせても、本当か確認しに来る客もいた。広報担当者は「間違った情報が一度広まると、打ち消すのは難しい」と振り返る。

 

感染症の大流行時や大地震の発生時は、デマが広がりやすい。SNSの普及でさらに拡散されやすくなり、2016年の熊本地震では、「ライオンが逃げた」とのデマも。真偽不明な情報があふれると、「インフォデミック」の状態になる。インフォメーション(情報)とエピデミック(流行)を合わせた造語だ。

 

新型コロナウイルス感染症でも、多くの偽情報が流れた。総務省が6月に公表した調査では、「お湯を飲むと予防に効果がある」「政府がロックダウン(都市封鎖)を行う」といった情報があった。「トイレットペーパーが不足する」というのも、その一つ。SNSの投稿を解析し、災害情報などを発信する「スペクティ」(東京)の代表取締役CEO、村上建治郎さんは、「SNSでデマが拡散しているのを、テレビなどで多くの人が知り、買い占めが起きる可能性を感じた。我先にと店頭に向かい、品薄になったのではないか」と分析する。

正常な判断できず

デマは悪意のある人が拡散させると思われがちだ。だが、知らずに加担する恐れは誰にでもあり、注意が必要だ。

 

東京女子大教授(情報社会心理学)の橋元良明さんは、「感染症や災害は、人々を不安に陥れる。正常な判断ができず、真偽不明の情報でも信じてしまいがち。他の人にも知らせるべきだと考えて拡散させてしまう」と指摘する。「信じてもらいたい」という意識が働き、もっともらしい根拠や情報源を付け足してしまう場合もあるという。

 

「情報を繰り返し見聞きすることで、信じる側面が強くなることもある」。こう指摘する慶応大教授(人工知能・計算社会科学)の栗原聡さんによると、デマには、広まってもしばらくすると収まる「シングルバースト」と、拡散のピークが何度もある「マルチバースト」がある。

 

トイレットペーパー不足のデマはマルチに当たる。誰にとっても必要な生活情報であるため、長期にわたって繰り返し話題になったという。

国のサイト確認を

東京女子大の橋元さんは「一般の人が発信するSNSの情報は根拠が不明確な場合が多い。頭から信じるのは避けるべきだ」と指摘。不確かな情報は、安易に人に伝える前に、国や自治体のサイトなどで確認する習慣を付けるよう勧める。「間違いだった時、人に迷惑がかかることを肝に銘じて」とくぎを刺す。

 

社会を不安が覆えば、いつデマの拡散が起きてもおかしくない。新型コロナの感染が再拡大し、国の観光支援策「Go To トラベル」が年末年始、全国で一斉停止されるなど、混乱が起きている。スペクティの村上さんは「緊張感が高まっている。今また、デマが増えないとも限らない」と警戒を呼びかける。

 

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