写真説明:東日本大震災による津波で、横倒しになった携帯電話の基地局(2011年3月、NTTドコモ東北支社提供)
通信技術による災害対応強化が進む
1995年の阪神大震災では、約30万回線の固定電話が不通となり、情報通信のもろさが露呈した。震災以降、携帯電話などの普及で、災害時の連絡手段が強化された。近年は、人工知能(AI)や人工衛星を使って被災状況や安否を即時に確認できる通信技術の開発も進む。最新研究を追った。
写真説明:阪神大震災では約30万回線の電話が不通となり、設置された災害用電話に被災者が長い列を作った(いずれも1995年1月、神戸市長田区で)
防災チャットボットで情報の即時共有
「行政と住民が同時に情報を共有できる。災害時の情報伝達のあり方を変える画期的なシステムだ」
無料通信アプリ「LINE」とAIを活用したシステム「防災チャットボット」を運用する神戸市危機管理室の末若雅之・総務担当課長は強調した。
システムは、防災科学技術研究所や情報通信研究機構などが開発。システムに登録した市民が、LINEで火災や建物被害などの様子を研究機構のサーバーに送る。届いた膨大な情報をAIが分析し、被害情報などをコンピューターの画面に映し出された地図に示していく仕組みだ。LINEで情報提供者に質問するプログラムもあり、情報の精度を高めている。
◆防災チャットボットのイメージ
説明:神戸市などへの取材により作成
登録した市民もスマートフォンなどで地図を確認できる。神戸市は2019年から運用を始め、内閣府も実用化に向けた研究支援を行う。
防災科研の臼田裕一郎・総合防災情報センター長は「AIや言語処理技術などを組み合わせることで、次々と変化する被災状況を即時に共有できる。住民の避難や行政の初動対応にも役立つはずだ」と話す。
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