保険・預貯金 欠かせず
津波などの大規模災害では、生活再建に向けて公的支援金や義援金を受け取れる場合があるが、個人による備えも重要だ。
内閣府のまとめによると、東日本大震災で全壊した住宅の建て替え費用は平均で約2500万円。一方、都道府県が支給する被災者生活再建支援金や、日本赤十字社などの義援金は計約400万円にとどまる。
代表的な備えに地震保険と預貯金がある。地震保険は住宅と家財それぞれについて火災保険に付帯して入る。住宅再建の費用の全てを賄うのは難しいが、損害に応じた保険金を受け取れる。預貯金は被災時に限らず、失業や病気などの時にも役立つ緊急予備資金として、生活費の3~6か月分は確保したい。
被災した住宅に多額のローンが残っていれば、新たな借り入れが負担となったり、困難になったりする「二重ローン問題」に直面する。このため、被災前のローンの減免制度もある。
◆住宅再建には多額の費用がかかる
※東日本大震災の事例から
◆被災時役立つ お金の備え
のしかかる出費
!住宅の修繕、立て替え費用
!家財購入費
!生活費(食費、被服費、交通費、通信費など)
→公的支援 多岐に
公的支援制度は種類が多く、把握するのは簡単ではない。災害時、各地の弁護士会がサイトなどでわかりやすく紹介するため、要件や申請先を確認したい。
代表的な被災者生活再建支援金は、住宅が全壊するなどの被害を受けた世帯に都道府県が、最大300万円を支給する。災害援護資金は市区町村による融資で、負傷したり住宅や家財に損害を受けたりした世帯主が対象。最大350万円。
→罹災証明が必要
住宅再建の道のりは険しいものにならざるを得ない。住宅が流失した場合は、移転を迫られる可能性も否定できない。修繕するなどして住み続ける場合、使えなくなった家財を運び出したり、室内を十分に乾燥させたりする作業から、再建への一歩を踏み出すことになる。公的支援金や義援金を受けるため、被害の程度を証明する「罹災(りさい)証明書」の交付を市区町村に申請することも忘れないでおきたい。
→心のケア
被災直後や長い時間を要する生活再建の過程で、被災者は様々な心理的影響を受ける。家族との死別や自宅の流失・損壊がもたらす喪失感のほか、避難所や仮設住宅暮らしによるストレスなどだ。被災時には自分だけでなく誰もが感じるものだと、普段から意識しておくことで、いざという時に心の負担を軽減できる。信頼できる人に被災体験を話すなどして回復につなげたい。
(読売新聞 2021年2月17日掲載 「防災ニッポン・津波」生活部・崎長敬志、福島憲佑、山村翠が担当しました)
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