歴史学者磯田道史氏が語る震災10年「今は災間です」

被災が予想される土地利用には妥協なき備えを

歴史的に、被災が予想される土地の利用には妥協なき備えが必要です。岩手県普代村では、明治三陸津波と昭和三陸津波を教訓に15・5mと高く築かれた水門や防潮堤によって死者数を抑えました。津波を免れた古い神社も数多くありました。過去に津波被害にあって移転を繰り返し、震災発生時は、高台にあった神社などです。

室町時代以前には、津波の引き波で海岸に打ち上げられた魚や貝を拾おうとした人が、しばしば落命しました。しかし江戸時代には、大地震後の浜辺は危険だと、多くの人々が認識しています。我々は、防災の知恵を少しずつ付けてきましたが、災害がない間は、すぐに忘れがちです。東日本大震災は、防災は絶えず必要だと再認識するきっかけになりました。

「災間」に重要なのは防災教育

大災害は地震・津波に限りません。現在は「post(後)」震災ではなく、「between(間)」と捉えるべきです。私は浜松市、京都市へと研究拠点を移しながら、地域の災害史に向き合ってきましたが、「災間」を生きるために何より重要なのは子供たちへの防災教育だと痛感しています。震災直後こそ、その重要性が叫ばれましたが、10年たって徹底されているでしょうか。歴史の教訓を将来に役立てるには、大人側の工夫と努力が絶えず要るのです。

磯田道史氏 <プロフィル> いそだ・みちふみ 茨城大准教授、静岡文化芸術大教授を経て、現在、国際日本文化研究センター准教授。著書に「天災から日本史を読みなおす」など。2021年2月に「マンガでわかる災害の日本史」(池田書店)を刊行。50歳。

(読売新聞 2021年3月4日掲載 文化部・多可政史)

無断転載禁止

この記事をシェアする

オススメ記事

新着記事

公式SNS