熊本地震を経験したプロが伝授「家庭でできる備え」

2016年4月の熊本地震から5年。被害が大きかった地域では、断水や長引く避難生活による不便を強いられた人も多かった。地震を経験した防災士らの話をもとに、改めて家庭でできる備えを考えたい。

1週間分の食料備蓄と「ポリ袋」料理のススメ

「水を節約できますよ」

防災教育に取り組む熊本市のNPO法人「ソナエトコ」の水野直樹理事長と高智穂さくらさんが、湯が沸いた鍋にポリ袋を投入した。

写真説明:ポリ袋に入れた食材を湯せんにかける水野さん(左)と高智穂さん

45万戸が断水 3か月続いた地域も…

熊本地震では、一時は45万戸が断水し、約3か月断水が続いた地域もあって、多くの人が水の確保に苦労した。この経験をもとに、ソナエトコの防災教室で紹介しているのが、ポリ袋を使った湯せん料理だ。食材を入れたポリ袋をゆでる料理法で、湯は少量でよく、洗い物も少なくて済む。「同じ鍋で複数の料理を同時に作れるのも利点です」と高智穂さんは話す。

2人は地元のラジオ局のパーソナリティー。番組で地域の防災を取り上げたことをきっかけに防災士の資格を取り、2013年に法人を設立した。

「十分な食料があれば心の余裕が違うはず」

熊本地震では、ラジオで災害情報を流す合間に、避難所を巡って支援に携わった。そんな中、度々耳にしたのが「明日も食事は届くのか」という被災者の声だったという。水野さんは「余震が続いて先行きが見えず、皆が不安を募らせていた。十分な食料があれば、心の余裕は違うはず」と振り返る。

そこで呼びかけるのが「1週間、家にある食材だけでしのぐ」ための備えだ。缶詰やレトルト食品はもちろん、ジャガイモなど日持ちする野菜は、普段の料理に使いながら一定量ストック。電気やガスが使えない場合に備え、カセットコンロは必需品という。

停電した時は、冷蔵庫内の食材を効率的に使う。肉や牛乳など傷みやすい食材から消費。冷凍庫内のものは冷蔵庫に移しておくと、保冷剤の代わりになる。

水野さんは「家にある食材を災害時にどう生かせるか、日頃から想定して」と勧める。

ポリ袋調理 お薦めレシピ

ポリ袋は、高密度ポリエチレンの耐熱性を使用。鍋の底に耐熱皿を敷き、袋が鍋に直接触れないようにする。食材を入れた袋はできるだけ空気を抜くと、火の通りが早く、味も付きやすい。

【炊飯】

袋に同量の米と水を入れて閉じ、沸騰した湯で袋ごとゆでる。半合なら20分ほどで炊きあがる。

【蒸しパン=写真=】

袋にホットケーキミックス(30g)と牛乳(30ml)を入れて混ぜ、袋を閉じて20分ほどゆでる。※袋にチョコレートやミックスベジタブルを入れてもいい。牛乳を野菜ジュースにしてもおいしい。

【アメリカンドッグ】

魚肉ソーセージを適当にちぎり、木の棒(割り箸など)に刺す。ホットケーキミックス(30g)と牛乳(30ml)を袋に入れて混ぜ、そこに棒ごとソーセージを差し込む。袋を閉じて20分ほどゆでて完成。

【その他の料理】

袋にトマトの水煮缶、カレールー、大豆の水煮缶を入れればトマトカレーになる。卵とハムを入れて加熱するとハムエッグ風に。サバの缶詰と切り干し大根(戻していないもの)で煮物も作れる。

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