熊本地震に学ぶ 命を守る住宅の地震対策は「等級3」

どうしたら安全に住めるのか

地震後、木造住宅を不安視する声を聞いた。しかし、設計次第でコンクリートより耐震性の高い建物を効率的に造ることはできる。益城町で2000年基準で建てられた住宅の倒壊は1棟にとどまり、基準の一定の妥当性が確認できた。

地震をきっかけに、「どうすれば安全に住み続けられるか」という観点で研究が進んでいる。注目すべきは「耐震等級」と呼ばれる評価だ。建築基準法で定められた耐震基準は倒壊しないことを求めているが、あくまで命を守るぎりぎりのラインだと考える。これに対し、耐震等級は、被害をより軽くするために、住宅品質確保促進法に基づいて高い性能を求めている。

「耐震等級」の性能は3段階

耐震等級には、2000年基準を満たす「等級1」から、その1・5倍以上の耐震性を持つ「等級3」まで3段階ある。現地調査や地震の揺れを再現する実験などの結果、等級3まで性能を向上させた建物であれば、熊本地震レベルの揺れでも外壁の損傷など軽微な被害で抑えられ、安全性を相当高められることが分かった。

地震後、熊本の建設業者らと等級3の住宅を薦める冊子を作り、普及に取り組んだ。現在、益城町などでは等級3の新築が増えてきていると聞く。

等級3は命を守る「保険」

等級3の性能は、今ある壁の強度を高めたり、新築時に室内に壁を多く設けたりすることで実現できる。自分たちの住宅の倒壊を防ぎ、命を守る「保険」として家を強くすることは大切な取り組みだ。

新型コロナウイルスの感染拡大で、これまで通りの避難が難しくなっている。自宅の耐震性を高めておけば、長期避難のストレスも回避できる。地震から5年を機に今一度、自宅の耐震化を考えてほしい。

五十田博氏<プロフィル>いそだ・ひろし 専門は木質構造学。建設省(現・国土交通省)建築研究所主任研究員や信州大教授などを経て、2013年から現職。55歳。博士(工学)。

(読売新聞 2021年4月17日掲載 科学医療部・村上和史)

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