飛沫拡散予測で活躍中の「富岳」を豪雨予測にも!

京の後継機、使いやすさを追求

スパコン「京(けい)」の後継機である富岳の計算速度は毎秒44・2京回(京は1兆の1万倍)。社会の様々な課題の解決に幅広く利用されるよう、使いやすさを追求して開発された。

試運転中に注目を集めたのは、新型コロナウイルスを含む唾液の飛沫の拡散状況の予測だ。理研チームリーダーの坪倉誠・神戸大教授は「通常、新しい計算機を使う際は調整に数か月かかるが、富岳は既存のソフトウェアをそのまま使えるため、すぐに計算を始められた」と話す。

不織布マスクの鼻の部分の金具を曲げて密着させた場合、飛沫数の85%をマスクがキャッチした。不織布マスクの上にウレタンマスクを重ねた場合は89%で、さほど変わらない。

マスクをせずに会話をしながら歩いている人の後ろは要注意だ。ウイルスが多く含まれる直径10µm以上の飛沫は、静止時はすぐに落下するが、歩行中は長く空中を漂い、2~3m後ろまで届くという。

◆富岳による飛沫拡散予測

(画像はいずれも理研・神戸大提供)

飛沫拡散以外にも

飛沫拡散以外のコロナ関連研究も進む。中でも注目が集まっているのが、新型コロナウイルスの表面にある鎖状の糖分子「糖鎖」の研究だ。理研は2021年2月、富岳による計算で、ウイルスが人間の細胞の中に入り込んで感染する際に、糖鎖が重要な役割を果たすことを発見したと発表した。

糖鎖の動きを制御できる物質を見つければ、新型コロナ感染を防ぐ薬になる可能性がある。

(読売新聞 2021年4月2日掲載 科学医療部・東礼奈)

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