国民の3割3651万人に洪水被害リスク!土地開発は?家庭の備えは?

なぜ人口が増えたのか

背景には、治水技術の発達に加え、都市部の人口増加に伴って郊外の宅地開発が進んだことが挙げられる。手頃な価格で土地を購入できるケースが多く、住民の増加に拍車をかけた。

人的被害が大きい近年の災害は、こうした地域に集中する。2014年の広島土砂災害では、戦後に宅地開発が進んだ広島市北部の山ぎわで多くの犠牲者が出た。2018年の西日本豪雨で50人以上が犠牲となった岡山県倉敷市真備町では、1970年代以降にベッドタウンとして水田地域から市街地となった場所での被害が目立った。

◇最近の主な豪雨災害

※本紙や国の集計に基づく。西日本豪雨は行方不明者を含まず。台風19号は台風21号などの被害も含む

抜本策は土地の利用制限

抜本策の一つに土地の利用制限があるが、資産価値を損なう恐れがあるため、行政機関は二の足を踏んできた。しかし、多くの犠牲者を伴う豪雨災害が相次いだことを受け、政府は規制に本腰を入れ始めた。

2020年6月、災害に強い街づくりを進める「改正都市再生特別措置法」などが成立。崖崩れや地すべりなど土砂災害の恐れがある地域を「災害レッドゾーン」とし、ビルや病院、ホテルなどの建設を禁じた。

洪水や高潮の危険がある「災害イエローゾーン」でも開発制限を強化。ゾーン内の「市街化調整区域」では、住宅などを新築する場合、安全対策や避難対策を講じることが条件になる。これらのゾーン外への引っ越しを促す支援制度も導入した。2021年4月には、川沿いにレッドゾーンを設定する別の改正法も成立した。

広く知らせる仕組みや制度も

立地のリスクを適切に伝える仕組みや、新築を抑制する制度も増えてきた。

不動産業者は、住宅の購入・賃貸契約者に「重要事項説明」として津波や土砂災害などのリスクを事前説明する義務があったが、2020年8月からは項目の一つに水害も加わった。

住宅金融支援機構は2021年10月以降、省エネや耐震性の基準を満たすと金利を引き下げる「フラット35S」の対象から、土砂災害特別警戒区域の新築物件を除外することを決めた。

課題も残る。山梨大の秦康範准教授(地域防災)によると、新しい制度の多くは、自治体が「規制地域を指定できる」という表現にとどまり、規制を義務づけているわけではない。「規制すれば住民が反発し、近隣自治体への人口流出も懸念される。国は施策の効果を上げるため、自治体の足並みがそろうようにバックアップすべきだ」と話す。

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