国民の3割3651万人に洪水被害リスク!土地開発は?家庭の備えは?

【備え】ハザードマップで自宅や避難先を確認しよう

水害への備えとしては、住民自身が自宅のリスクを知ることが第一歩となる。そこで役立つのが、市町村が公表する洪水ハザードマップ(災害予測地図)だ。

◆ハザードマップのチェックポイント
□ 自宅や周辺地域の浸水危険度
□ 避難が可能な複数の経路
□ 安全な避難先や移動手段
□ 浸水の継続時間や、堤防決壊時に住宅が倒壊・流出する地域

ベースとなるのは、国や都道府県が作る浸水想定区域図。発生頻度が約1000年に1回の「想定最大規模」、10~200年に1回の「計画規模」の2パターンの雨量に応じ、浸水域と深さが示されている。市町村が、地域の防災拠点や避難所などを描き加えるなどして作成する。

例えば2020年7月の九州豪雨では、氾濫した球磨川沿いの熊本県人吉市上流で12時間雨量が321mmとなった。想定最大規模(502mm)には達しなかったが、80年に1回の大雨として設定していた計画規模(262mm)を上回った。当時のハザードマップは計画規模で描かれており、実際の浸水域と近似していた。

国土交通省によると、浸水想定には、川の形状や堤防の整備状況、地盤の高さなどのデータを使う。氾濫しそうな地点を川沿いに約200m間隔で設定し、流域を25m四方に区切った格子ごとに水の広がり方を解析する。全ての計算結果を重ね合わせてハザードマップを完成させる。

浸水域に含まれない場合でも…

避難に役立てるには、自宅や周辺地域、避難先がどの程度浸水するかを確認することがポイントになる。浸水域に含まれない場所も安全とは言い切れない。

「川の水位が上昇して橋が使えない」「崖崩れで道路が通行止め」などのケースを想像し、複数の避難経路を用意しておくと良い。知人宅やホテルへの移動、在宅避難が選択肢に入る人もいる。

片田敏孝・東京大特任教授(災害社会工学)は「ハザードマップは、避難のタイミングや避難先を考える際に参考になる。その上で最も重要なのは『己を知る』ことだ。自然災害に立ち向かうには、もし我が家が被災したら、という積極的な姿勢で学ぶ意識を持つことが大切」と訴える。

(読売新聞 2021年6月20日掲載 科学部・松田晋一郎、中村直人)

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