備えない防災「フェーズフリー」のすすめ

前向きに取り組める人ばかりではない

とはいえ、防災意識の向上や非常時の備えについて、前向きに取り組むことは難しいものです。そこで、人々が災害に備えられないことを前提に、日常の商品やサービス、施設などを、非常時でも機能するようにデザインする考え方が「フェーズフリー」なのです。

写真説明:秦康範山梨大学工学部准教授

日常と非常時を区別しないで考えると

災害の時に役立つのが防災グッズ・防災サービスですが、フェーズフリーは日常から価値があるものを目指します。例えば、プラグインハイブリッド車(PHV)があります。普段は省エネな自動車として利用できる一方で、災害で停電した時には4日分の家庭の電源にすることが出来ます。自家発電装置を備蓄するのは難しいかもしれませんが、PHVなら普段の生活で使いながら、災害に備えることが出来るのです。

このほか、リュックのバックルが非常時に助けを呼ぶ笛になっているものや、おしゃれなデザインでありながら、避難時にはトイレや着替えの目隠しになるポンチョなど、フェーズフリーの考え方を取り入れた商品は増えています。普段は住民の憩いの場である公園に備蓄倉庫やマンホールトイレを整備し、防災拠点としている例もあります。

備えられないなら考え方を変えてみる

小中規模の水害がほとんど起きなくなった結果、水害は過去のものになり、軒先のボートはなくなってしまいました。しかし、大雨などの気象現象はどんどん極端化しています。過去の事例に学んでしっかり備えることは大事ですが、備えられない人たちがいるのも事実です。そういう時、フェーズフリーの考え方が非常に重要になってくると思っています。

(読売新聞 2021年7月28日掲載)

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