保冷ボックス・浮具になるスツールも
発泡スチロール製品メーカー・石山(東京)のスツール「ソナエア」も、日用品として使える防災グッズだ。軽くて断熱性に優れた素材を使って開発。保冷ボックスの機能があり、座面の蓋を外すと2L入りペットボトルが4本入る(=写真)。浮力もあるため、浸水時の浮具としても期待できる。
避難時は粉ミルク計量に使える紙コップ
また、食品容器製造のサンナップ(同)の紙コップは計量用の目盛りが印字され、避難先で粉ミルクを溶かす時などに役立つ。
メモ帳になるカード入れ
文具大手のコクヨ(大阪)とシール製造のコスモテック(東京)が開発したカード入れは、特殊加工を施した裏面にボールペンで書き込め、消しゴムで消せるので、メモ帳として使える(=写真)。「首から下げておけば、災害時の携帯品としても便利」と担当者。医療や教育現場で人気だという。
フェーズフリーが注目される理由は
これらに共通するのは日常だけでなく、非常時も機能するようデザインされている点だ。大学院で防災工学を研究した佐藤唯行さんはこうした概念を「フェーズフリー」と名付けて提唱。「防災対策が必要だと分かっていても、子どもやお年寄り、障害者は独力で備えられず、多くの人が忙しさから対策できていない」と指摘する。
警備大手のセコム(同)が2021年7月、全国の20代以上の男女500人に尋ねた調査でも、約半数の48・4%が「防災対策をしていない」と回答。理由は「具体的にどのような対策をすればよいかわからない」(50・8%)が最も多かった。
備えられないことが前提になっている
佐藤さんが被災地調査で各地を訪れるたび、多くのモノが不足し、被害に苦しむ人々がいる。十分な対策が取れずに繰り返される悲劇をどう防ぐか。たどりついたのが、備えられないことを前提とした「フェーズフリー」の普及だった。
2018年に「フェーズフリー協会」(同)を設立。優れた製品やアイデアを顕彰する「フェーズフリーアワード」や認証制度を設けた。「安心安全な社会の実現に向け、あらゆる商品やサービスに反映されれば」と佐藤さんは願う。
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