山梨に災害はなかったの?自然災害伝承碑の情報を山梨大などが収集中

全国の登録件数1050のうち山梨県分は

一方、山梨県内の登録数は2021年9月1日現在で6市町村19基にとどまる。多くは1959年の台風7号や伊勢湾台風の被害を伝えるもので、最も新しい伝承碑でも1991年の富士五湖増水まで遡る。山梨大の秦康範・准教授(地域防災)は「山梨では数十年近く大勢の犠牲者が出るような災害が発生しておらず、知識や関心が薄れている」と警鐘を鳴らす。

◆山梨県内の自然災害伝承碑

※国土地理院の資料を基に作成

伝承碑をどのようにいかすか

災害の記憶が地域で伝えられなければ、被害が繰り返される恐れがある。国土地理院によると、西日本豪雨で18人が犠牲になった広島県坂町では、明治時代にも土石流で46人が死亡していた。災害を伝える石碑があるにもかかわらず、地元で十分に周知されていなかったとされる。

このため秦准教授や甲府河川国道事務所は、山梨県内に点在する伝承碑を調査し、市町村に登録の申請を呼びかけている。地図への登録だけでなく、調査結果は小中学校などでの防災教育にも活用する考えだ。石碑以外にも、土石流の被害があった跡地に整備された公園や災害遺構などにも対象を広げて調査していくという。

秦准教授は「自分の住む地域で過去に起きた災害を知れば、人ごとではないと分かってもらえる。先人が伝えようとした災禍を掘り起こしていくことが重要だ」と話している。

(読売新聞 2021年9月8日掲載 甲府支局・鈴木経史)

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