濃尾地震を機に地震が起こる仕組みの研究が始まった
政府中央防災会議の調査会で、濃尾地震に関する報告書を取りまとめた山岡耕春・名古屋大教授(地震学)によると、当時、地震の原因はまだわかっていなかった。濃尾地震の約8か月後、国は「震災予防調査会」を発足させ、地震が起こる仕組みの研究から始めた。
山岡教授は「『地震は断層が引き起こす』という、現在では当たり前の考え方は、濃尾地震で地上に現れた断層から始まった」と話す。
規模や揺れ方に違いはあっても、さまざまな地震の原因は、濃尾地震で明らかになった「岩盤のずれ」で説明できる。
地震の原因を「岩盤のずれ」から説明すると
日本周辺では、地球の表面を覆う巨大な岩板「プレート」4つが複雑にぶつかり合っている。海側プレートは陸側プレートの下に年間数cm~10cm程度沈み込み、境界にはひずみがたまっている。
◆日本周辺のプレート
南海トラフは、海側のフィリピン海プレートと陸側のユーラシアプレートとの境界で、ひずみに耐えきれなくなるとプレートが一気にずれ動く。これが海溝型地震で、規模が大きく広範囲で揺れる。ずれに伴って海水が押し上げられ、東日本大震災のような津波被害が起きる。
一方、ひずみは陸側プレートの内部にも蓄積され、内部の強度の弱い場所では岩盤が壊れてずれ動く。これが内陸直下型地震で、濃尾地震や阪神大震災などが該当する。今後も活動すると考えられる場所は「活断層」と呼ばれる。震源が比較的浅く、人々が生活する真下で起きるため、激しい揺れでの家屋倒壊などが懸念される。
◆内陸直下型地震と海溝型地震の違い
◆内陸直下型地震と海溝型地震の特徴
内陸直下型でも、2021年10月7日に首都圏で起きた最大震度5強の地震でずれ動いたのは、活断層ではなく、2つの海側プレートが重なる境界だったとみられている。
東海地方には活断層が集中しており、南海トラフ地震と同様に、内陸直下型地震がいつ発生してもおかしくない。ひとたび大地震が起きれば、震源周辺の岩盤に新たなひずみが生じ、余震や他の地震を誘発しやすい状態となる。
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