高層ビルで大地震!長周期地震動で揺れが大きく長く襲う(後編)

写真説明:首都圏の臨海部に林立する高層ビル。地震が起きると高層階ならではの大きな被害があることは知っておきたい。

高層階の居住者や利用者が心得ておいたほうがよいこと

高層ビルで高層階が大きく揺さぶられる「長周期地震動」。想定される被害やとっておきたい対策を、専門家に聞く。

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東日本大震災では震度3だった大阪府の55階建てビルが損傷した

2011年の東日本大震災の震源である三陸沖から約770㎞離れた大阪府の咲洲(さきしま)庁舎(55階建て)。周辺は震度3だったが、建物は長周期地震動により約10分間、横方向に最大2・7m揺れた。全32基のエレベーターが停止し、天井や壁などの損傷は360か所にのぼった。

長周期地震動の特徴

長周期地震動は周期(揺れが1往復する時間)が2~3秒より長いゆっくりとした揺れで遠くまで伝わる。超高層ビルや長い橋などは周期の長い地震動と共振するため大きく揺れる。3大都市圏には長周期地震動を増幅する軟らかい地盤が数百~数千mの厚さで堆積(たいせき)している。

南海トラフ地震なら大阪市の高層ビルの最上階は最大6m揺れる

マグニチュード8~9級とされる南海トラフ地震の場合、高さ200~300mのビル最上階で、大阪市では最大6m、名古屋市では同2m、東京では同2~3mの揺れが想定されている。政府は3大都市圏を中心とした11都府県にまたがる地域で、想定される最大の揺れに耐えられるよう高層ビルの「耐震基準」を厳格化した。関東大震災(1923年)の震源となった相模トラフ沿いの地震でも、長周期地震動による揺れがどの程度になるのか、想定が進められている。

大きな被害が出ると心配されているのがエレベーターだ。閉じ込められた人の救出が遅れると命の危険がある。

エレベーター閉じ込めはどのぐらい起きる?

政府は2009年以降、揺れを感じると最寄り階で止まって扉を開ける自動停止装置の設置を義務づけている。日本エレベーター協会によると、国内にある約77万3000台(2021年3月末)のうち設置率は約76%に達した。東京・埼玉で震度5強を記録した2021年10月の地震では、約7万8000台が停止したが、閉じ込めは1都3県の25台にとどまり、3時間以内に救出された。

だが、政府の中央防災会議は最大震度7とされる首都直下地震では、最大約3万台(約1万7000人)の閉じ込めが発生すると想定。南海トラフ地震では同約4万2000台(約2万3000人)にもなる。救出に時間がかかり、熱中症などで死者が出る恐れもあるとしている。

東日本大震災を超える長周期地震動が発生したら…

名古屋大学の福和伸夫教授(耐震工学)は「東京の高層ビルには国家と経済の中枢が集中しており、東日本大震災時を超える長周期地震動が発生すれば、まとめて機能不全に陥ってしまう恐れがある。最悪の事態を避けるため対策を急ぐ必要がある」と警鐘を鳴らしている。

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