災害時はドローンやアプリで迅速安全な避難を!最新研究チェック

住民が集中してあふれる避難所の受け入れ課題には

避難所の受け入れも課題の1つだ。一部の避難所に住民が集中すれば、あふれた人たちは別の避難所を探すことになる。

「組み合わせ最適化」で避難所たらい回し回避へ

奈良先端科学技術大学院大の諏訪博彦准教授(社会情報システム)らのチームは、この課題を「ナップザック問題」と呼ばれる数学の問題に置き換えて解決しようと試みる。これは、容量に限りがあるザックに、大きさや価値が異なる荷物をどう詰めれば総価値を最大にできるか、という「組み合わせ最適化」の問題だ。

チームは、奈良県生駒市で夕方に大地震が起きたと想定。ベッドタウンの同市は夜間人口が多く、約3万人が避難する状況をコンピューターで予測した。

無秩序に避難すると、避難完了までに2時間41分かかり、避難所のたらい回しが最大8回生じた。

◆迅速な避難を考える「ナップザック問題」

一方、避難所や道路の混雑具合などを考慮して誘導すると、避難完了まで1時間27分と1時間以上短縮できた。

避難誘導には、スマートフォンなどで道路や避難所の混み具合を確認できる技術がカギとなる。このためチームは、災害時の活用を視野に、交通機関などの混雑状況を把握できるアプリの開発を進めている。

実用化されたシステムも

既に実用化された技術もある。IT企業「バカン」(東京)は、市民が避難所の混雑状況を確認できるシステムを開発し、2020年8月から自治体向けに提供している。2021年末までに195市区町村が導入した。

このシステムでは、自治体職員が避難所の状況を「空いています」「やや混雑」「混雑」「満」の4段階で登録。市民がスマホやパソコンで専用サイトを開けば、地図上で避難所の状況が簡単にチェックできる。

宮崎県日南市が2020年9月の台風10号接近時に活用したところ、1万回以上閲覧された。専用サイトを見た市外の人が、市内の家族に状況を伝えて速やかな避難に結びついたケースもあったといい、市総務・危機管理課の担当者は「避難所の状況を共有することで、市民と自治体の双方がスムーズに動けた」と話す。

(読売新聞 2022年1月14日掲載 「減災」 科学医療部・長尾尚実、松田俊輔)

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