乳幼児や妊娠中の防災対策(前編)こんな避難になったら困る

写真説明:地震による津波を想定した避難訓練(2021年3月、岩手県宮古市で)

すぐ避難できるよう備えていますか?

乳幼児や妊婦は緊急時に迅速な避難行動が取りにくく、避難生活が長引けば、心身両面で負担をより感じやすい。事前に必要な備えは何か、避難時に気を付けるべき点は。架空のシナリオで考えておきたい。

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シナリオ1 「非常用持ち出し袋」におむつが入っていない

「帰ったよ」。休日の午後遅く、海辺の町に住む会社員の太郎(32)が、1歳半になる長男との散歩を終え、アパートの自宅玄関を開けたところだった。突然、スマートフォンから異様な音が鳴り始める。緊急地震速報だった。すぐに大きな揺れに襲われ、太郎はとっさに長男を抱き上げると、建物から離れた。

長男をかばいながら、どのくらいの間うずくまっていただろう。揺れが収まり、太郎がスマホを取り出すと、震度5強、津波警報が発令されたことを伝えていた。

「大丈夫か」。太郎は慌てて家に入る。2人目を妊娠している妻の花子(29)がよろめきながら居間から出てきた。ショックを受けた様子だが、けがはなく、太郎はひとまず胸をなで下ろした。

だが、避難を急がなければならない。太郎は、玄関近くに置いていた非常用持ち出し袋を手に取った。セットで購入したものだ。

「おむつとか、子供の食べ物は入れてあったよね?」。花子の言葉に太郎はハッとした。慌てて花子が中を見るが、入っていない。

取りに行こうとする花子を太郎は制した。「時間がない」。長男との散歩で念のため持っていた抱っこひもと、非常用持ち出し袋を手に外に出た。

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