シナリオ2 妊娠中だとゆっくりしか動けない
「急ごう」。太郎は長男を抱っこひもで抱え、非常用持ち出し袋を背負うと、妊娠中の花子を気遣いながら、とりあえず高台の方を目指した。
だが、子育てのために自然豊かな環境を求めて引っ越してきたばかりで、避難場所がどこかは知らなかった。同じように避難している人に聞こうと考えたが、休日のため外出しているのか姿が少ない。それでも一人に声をかけると、「2kmほど離れた高台の小学校の体育館ですよ」と教えてくれた。
その人についていこうとするが、花子の手を取って慎重に歩いているため、スピードが上がらない。辺りも暗くなり始めており、見失ってしまった。
「スマホで調べてみたら」。花子に促され、太郎は自治体のハザードマップを検索しようとするが、歩きながらの上、長男を抱っこしており、文字の入力に手間取る。焦りが募った。
ようやくスマホで小学校の位置を確認し、体育館にたどり着いた頃には、日が沈んでいた。太郎は長男を抱っこひもから下ろし、非常用持ち出し袋を床に置くと、へとへとになって座り込んだ。
「散歩であれば、長男を抱っこひもで長時間抱えていても疲れないのに」。花子も疲れた表情だったが、幸い、体調に問題はないようだった。
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