乳幼児や妊娠中の防災対策(前編)こんな避難になったら困る

シナリオ3 避難所で子どもが泣きやまない

1m超の津波が観測されたという。警報が解除されないため、太郎たちは体育館で一夜を明かすことにする。

避難途中では少ないと思ったが、かなりの人数が集まっている。段ボールのパーティションで家族ごとに仕切られている上、新型コロナウイルス対策で間隔も空けられているとはいえ、声は筒抜けだ。

長男はいつもと違う環境に戸惑ったのか、まもなくぐずり始めた。大声を上げそうになったため、花子が抱いてあやすが、泣き出してしまった。慌てた太郎が「静かにして」となだめても、泣きやまない。

それでも、長男はしばらくすると泣き疲れたのか、花子の腕の中で眠りに落ちた。ほっとした太郎は空腹に気付いた。

「おなか、すいたね」。非常用持ち出し袋を開け、非常食を取ろうとして手を止めた。長男が食べられるものを用意していなかったことを思い出し、親として恥ずかしさがこみ上げる。「あしたの朝、子供が食べられるようなものが配られるかしら」。花子も自分を責めているようだ。

太郎は花子と一緒に日々の家事や子育てに懸命に取り組んできたつもりだった。だが、いざという時の備えが足りなかったことにがくぜんとしていた。

(読売新聞 2022年2月16日掲載 「防災ニッポン 乳幼児・妊婦の備え」 生活部・大郷秀爾)

後編では、乳幼児や妊婦のいる家庭が注意すべきポイントや備えておくとよい物などを紹介します。

<関連する記事はこちら>
避難時に持ち出したい!子どもの年齢別アイテム

無断転載禁止

この記事をシェアする

オススメ記事

新着記事

公式SNS