3.11千葉にも津波が押し寄せた!旭市防災資料館が伝える津波被災

大津波警報が出ていた

資料館の語り部、宮本英一さんは自宅で第3波にのまれた。何度も水に沈み、屋根の残骸にはい上がった。「自分は大丈夫と思い、大津波警報が出ていたのに避難しなかったことを反省している」。来館者には率直に語っている。

写真説明:「忘れじの時計」の前で話す語り部の宮本さん

岬があり、湾曲した地形の旭市沿岸では、海岸に反射した波に後から来た波が重なるなどして、津波が集中したとされる。被害が少なかった1960年のチリ地震津波を経験した人ほど避難が遅れたという。展示は前例にとらわれてはいけないことも強調する。

宮本さんが地元のこの資料館で語り始めたのは2021年2月。亡くなった人もいる中、それまでは助かった経験を話すことにためらいがあった。

今は1つの使命と考え、子どもたちにも語る。「大人になる過程で思わぬことが起こるだろうけど、とにかく生きる、生きてみることを第一に人生を歩んでほしい」。生死の境を経験した者として、いつもこの言葉で締めくくる。

写真説明:再現された避難所生活の模型

記者からもうひと推し

◆石碑で伝える大津波

資料館前の海岸には2013年、地元の飯岡ライオンズクラブが震災の記憶を伝える石碑を建てた。「伝えつなぐ大津波」の文字と、最大波の海抜7.6m地点にラインが引かれている(=写真)。

この碑を含め、国土地理院は全国の災害伝承碑を地図に記す作業を続けており、1200基以上をホームページで公開している。

幕末の安政東海地震で津波被害に遭った三重県志摩市の「地震津浪遺戒」の碑文は「地震が起きたら高齢者や子どもを抱えて高台へ避難するように」と刻む。列島の津々浦々に残る歴史からの警告に耳を傾けたい。

◆旭市防災資料館
2014年に開館し、東日本大震災の発生当日から復旧・復興の道のりを写真や映像を交えて伝える。

住所:千葉県旭市萩園1437(いいおか潮騒ホテル1階東側)
開館時間:午前9時~午後5時、休館は月曜(祝日の場合は翌平日)と祝日の翌日
入館料:無料
問い合わせ:電話0479・57・6712
HP:https://www.city.asahi.lg.jp/soshiki/3/2421.html

(読売新聞 2022年2月28日掲載 地方部内信課・菊池宏一郎 写真・八木沼卓)

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