仏像参加の訓練も!国宝重文多数の奈良が注力する防火対策

防火訓練に特別な仏像がお出まし

市消防局の管内では、東大寺で1998年5月に境内の戒壇院千手堂が全焼。重要文化財「愛染明王坐像(あいぜんみょうおうざぞう)」を含む仏像が損傷した教訓から、市消防局は翌年、搬出訓練用の模擬仏像を製作した(=写真、奈良市消防局提供)。

重さも分解方法も本物仕様

光背や台座を含む総重量は63kg。一般的な仏像と同じ方法で部位ごとに分解できる仕組みにもなっている。市消防局は毎年、消防隊員がばらして運び出す方法などを学び、実際の火災現場でもスムーズに対応できるよう、訓練を重ねている。

また、火災の発生時に、消防車の進入路や収蔵物の情報を迅速に現場隊員に伝えるため、寺社ごとの消防支援情報システムや収蔵物搬出計画の更新も進めている。中谷文化財防災官は「いかに被害を最小限に食い止めるかを意識して、文化財所有者と協力して防火対策の計画、策定を進めたい」と語る。

お参りするだけでは見えてこない不断の努力が、1300年を超える古都の財産を守っていると言えそうだ。

(読売新聞 2022年2月23日掲載 奈良支局・土谷武嗣)

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