災害ボランティア考「恩のリレー」が厄災の社会を拓く

メンバーが共有している問題意識

阪神大震災を機に結成されたNVNADはそれまでにも、2004年の新潟県中越地震などに駆けつけました。活動を通じ、「災害直後の緊急時の救援だけで十分なのか」との問題意識をメンバーが共有するようになりました。

災害で過疎が進む

多くの被災地は人口減少が進んでおり、災害により過疎化のスピードは加速します。それは都市部でも起きえる現象です。地域社会の縮退も念頭に、どう復興を目指すのかがこれからの課題なのです。「外部のボランティアが長期的に手助けをしても良いのでは」と発想を切り替えました。

東日本大震災でも、「ボランティア活動が終了するまで10年はかかる」と覚悟を決めていました。そこで、人々が避難所から仮設住宅に移った後も、炊き出し、その月に生まれた人を祝う月例誕生会、拾い集めた写真を洗浄し、持ち主に返却する活動、戸別訪問による見守りなどを続けました。

NPOとは別に教員としても関わった

野田村には大阪大学の教員としても関わりました。村内にサテライト教室を開設し、大学院生によるフィールドワークの拠点としました。学生は夏季に約10日間、村に泊まって、村民から話を聞きます。傷ついた村の状況や大人が涙ぐんで話すさまに接するのです。

野田村のサテライト教室では、大学教員や市民団体の有志を講師にした村民向けのセミナーを2013年から2018年まで、月命日の11日に毎月開催しました。国内外の復興事例なども紹介しました。防波堤や住宅などの復興のメドがついた後は、村民自身が後世の子どもたちに、村の歴史や震災の経験を誇りを持って伝える必要があります。

外部から関わる専門家ができること

少子高齢化が進み、地域の力が弱まる中で、村民と我々が復興に向けた新たな価値観をどう創出するのか。また、被災者が肌感覚で気付いていることを、外部者である専門家は言語化し、明確なイメージとすることができます。こうしたプロセスを通じて、物理的な復興にとどまらない、まちづくりの選択肢を示すことができたかと思います。

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