写真説明:地震の避難所に設けられたペットコーナー
過去の災害時に避難所で課題が多数浮かび上がった
ペットを家族の一員のように考えて暮らす人は少なくない。災害時、ペットをどう守り、共に避難したらいいのだろうか。過去の大災害では、ペットと避難所で過ごすことができずに車中泊を余儀なくされたり、避難所に連れてきてもにおいや鳴き声によるトラブルが相次いだりするなど、課題が多かった。ペットとの避難について、架空のシナリオで考えておきたい。
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シナリオ1 震度6弱で津波警報「ハチは無事か」自宅へ急ぐ
沿岸部で1人暮らしをしている会社員の太郎(30)は、オス犬のハチ(3歳)が生まれたばかりの頃からかわいがっている。
マンション2階の自宅室内で飼っているハチをいつも通り残し、歩いて出社した。自宅にほど近いオフィス街を歩いていた午後、太郎のスマートフォンがけたたましく鳴った。「緊急地震速報」だ。すぐに大きな揺れに襲われ、思わずその場にしゃがみ込んだ。
揺れが収まり、スマホで見た速報の震度は6弱。周囲を見回したが、建物などに大きな被害はないようだ。ほっとしたのもつかの間、スマホに津波警報を知らせる通知が届いた。約30分後には津波が来るという。
真っ先に頭に浮かんだのは、自宅にいるハチのこと。自宅は津波の浸水想定区域にある。行政の防災無線は、ただちに高台など安全な場所へ避難するよう呼びかけている。
ハチは大事な家族だ。今いる場所から自宅まで、走れば5分ほどの距離。「置いて避難することはできない」と、急いで自宅へ向かった。家具は固定してあるが、ハチは無事だろうか。不安を募らせ、息を切らして走った。
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