富士山噴火後の避難計画が「まず徒歩で」となった理由

現行計画との違いについて

11万人の安全確保をどう考えるか

中間報告が示した方針と現行の避難計画との最大の違いは、避難方法の考え方にある。

富士山は遅くとも噴火の数時間前には予兆が表れるものの、噴火のタイミングは予測できず、そのまま数か月間噴火しない可能性もあるとされる。しかし、現行の避難計画に当てはめれば、警戒レベル次第では噴火前でも11万人もの住民が大挙して被害想定範囲外に避難する必要がある。このため、「そもそも遠方に避難しなければ安全が確保できないのか」との視点から見直しは進められた。

写真説明:富士山噴火を想定した訓練で、山梨県富士吉田市から市外に向かう車に乗り込む避難者たち(2021年11月27日)

溶岩流の速度から考えると

津波とは異なり、溶岩流は市街地では人が歩く速さほど。数百m~数km程度歩けば安全を確保できる。さらに、被害想定のハザードマップが精緻(せいち)化し、以前より効果的な避難を可能とした。このため、中間報告は「徒歩避難が有効」のメッセージが盛り込まれた。今後、地域住民への周知と浸透が課題になりそうだ。

避難計画は、各市町村が地域防災計画を策定するための基本方針となる。要支援者や登山客への対応を盛り込んだ最終報告の完成が急がれる。各市町村には、地域の実情に即した避難体制の早期整備が求められる。

(読売新聞 2022年3月31日掲載 甲府支局富士吉田通信部・清水誠勝)

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