国難の南海トラフ地震にどう備えるか!防災科研理事長林春男氏の考え

被災地の復興について

たとえば神戸市。阪神大震災の復興計画の9割近くは、3年かけて作り上げられ、完成目前だった市の街づくり計画をベースにしたものという。

関東大震災からの復興では、環状道路網など、現在の東京の骨格が作られたが、この復興計画が迅速にできたのは、内務大臣などを務めた後藤新平が震災直前まで積み重ねた調査研究があってこそだった。

防災科研のトップとして危惧していること

いま、最も危惧しているのは、30年以内の発生確率が「70~80%」と見込まれている南海トラフ地震だ。台風や集中豪雨などが同時に襲来する複合災害の恐れもある。政府は、救助や医療などの応急対策計画は作ったものの、220兆円という桁違いの被害が想定される「国難」から立ち直るための備えとして十分なのだろうか。危機感を募らせる。

東日本大震災では、復興庁発足が震災11か月後になり、東北地方全体をどう復興させるかというビジョンが定まるのが遅かったと、感じている。同じ轍(てつ)を踏んではならない。「国難後の新しい社会はどうあるべきなのか。事前に議論しておくことが不可欠だ」

林春男氏 <プロフィル> はやし・はるお 1951年、東京都生まれ。米カリフォルニア大ロサンゼルス校博士課程修了。弘前大助教授、広島大助教授、京都大防災研究所教授などを経て、2015年から現職。阪神大震災直後に作成した「心のケア」の手引書は、避難所などで使われた。兵庫県や神戸市の復興委員など震災復興に関わる要職を数多く務めた。

(読売新聞 2022年4月8日掲載 科学部・松田晋一郎)

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