富士山噴火後の「徒歩避難」で逃げ遅れないための心得

ハザードマップの改定を受けた見直し

避難計画の見直しは2021年3月、17年ぶりに改定されたハザードマップ(災害予測地図)に基づき、進められている。最新の研究を踏まえ、改定版では避難方法を決める前提となる噴火規模や影響範囲が変更された。

噴火が想定される火口の数は、改定前の44地点から約5倍の252地点に、溶岩の噴出量は7億㎥から約2倍の13億㎥に増えた。火口が分布する範囲も山頂の北東に位置する山梨県富士吉田市と、南西の静岡県富士宮市の市街地方向に大きく拡大。溶岩流が到達する可能性がある市町村は、山梨、静岡両県の15が、神奈川県内を含む27に増えた。

ハザードマップの改定で、溶岩流が3時間以内に到達する範囲の推計人口は、それまでの約1万6000人から約7倍の約11万6000人まで一気に拡大した。

全員が避難終了までの時間を試算すると

噴火前に避難を開始すべき住民が、溶岩流の影響が及ばない範囲まで車で一斉に避難すると仮定し、避難計画の検討委員会が避難終了までの時間を試算した結果、富士吉田市からでは最大5時間47分、富士宮市では最大6時間48分かかることがわかった。

渋滞の影響は避難対象者が多い地域ほど大きい傾向があり、車が徒歩の約6倍というケースもあったが、対象者が少ない地域では、車の方が早いケースもあった。このため中間報告は、渋滞対策が取られ、逃げ遅れが防げる場合、車での避難を含め、地域の実情に応じた避難方法も認めた。

前兆の観測後にどのぐらいで噴火するのか

火山災害は、噴火の前兆を観測した後、実際に噴火するまでどれくらい時間がかかるかを予測するのが難しい。避難開始が遅すぎれば死傷者が増え、逆に早すぎれば、避難生活が長期化して暮らしや経済に大きな影響が出る。

検討委の委員長を務める藤井敏嗣・東京大名誉教授(マグマ学)は「溶岩流からの徒歩避難は、生命を守った上で暮らしも守る避難を目指した結果だ。溶岩流の速度は人が歩く程度で、むやみに恐れる必要はない」と指摘する。

歩行速度は人によって異なるが、検討委の試算では、歩行困難者が時速1・8km、一般的な集団歩行では時速3・6km程度とされている。

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