「フェーズフリー」の防災広がる。商業施設やホテルでも


写真説明:かまどに様変わりしたベンチ(2022年9月、福岡市内で)

平時に使うモノが早変わり

平時と非常時とを区別しない「フェーズフリー」という防災の新たな考え方を商品や施設に取り入れる動きが広がっている。公園のベンチがかまどに素早く形を変えたり、コンテナホテルが被災地へ運ばれて避難所になったり……。柔軟な発想で災害時に対応する「備えない」試みが注目されている。

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「ららぽーと福岡」のベンチはどうなるか

福岡市博多区の商業施設「ららぽーと福岡」。施設内にある緑地の一角で2022年9月中旬、スタッフたちが設置されているベンチの解体を始めた。座面のネジをゆるめ、取り出した複数のパネルを組み立てると、「かまど」となった。

作業時間は2、3分。45Lの鍋2つが煮炊きできる大きさで、地震に見舞われた際は温かい食べ物が提供できる。ベンチ横には組み立て方が書かれた説明板が立てられており、だれでも対応できる。


写真説明:ベンチから形を変えたかまどでは、鍋2つを煮炊きできる

運営会社の狙い

施設は2022年4月に開業した。ベンチは帰宅困難者なども立ち寄れるよう、幹線道路に近い場所に2台設置されている。系列施設では大阪、埼玉に続く3例目で、運営する三井不動産商業マネジメントの吉田裕之さんは「災害はいつ発生するか分からない。安心して買い物をしてもらえるよう、フェーズフリーな設備を取り入れた」と話す。

フェーズフリーとは

フェーズフリーは、日常や非常時といったフェーズ(時間や局面)の区分にとらわれず、普段から快適な生活を送ることを目指す考え。日常で使っているモノやサービスが災害時にも役立つことを指し、「備えない防災」とも言われる。学生時代に災害軽減工学を研究した佐藤唯行さんが2014年に提唱した。佐藤さんは1993年の北海道南西沖地震で津波被害を受けた奥尻島に入り、以来、防災の啓発活動を重ねた。だが、2011年の東日本大震災で同じ光景を目の当たりにし、「なぜ災害は繰り返されるのか」と無力感にさいなまれた。

多くの人が災害で家族や日々の暮らしを失いたくないと考える一方、万全の備えができている人は少ない。「備えには限界がある。日用品が災害時でも役立つなら、結果的に安全で安心な社会になる」と考えたという。

佐藤さんは一般社団法人「フェーズフリー協会」(東京)を2018年に発足。理念に見合う商品やサービスの認証制度をつくり、普及活動などを行うと、昨年は災害時にも非常に役立つ商品などを表彰する取り組みも始めた。

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