「非常食」を賢くおいしく

写真説明:「防災アウトドア」のコーナーには、備蓄用にもなる食品が数多く並ぶ(「石井スポーツマロニエゲート銀座店」で)

ガスや水道などのライフラインが寸断されれば、在宅避難で食事の用意をするのは簡単ではない。必要な食材や調理用具をそろえ、日頃から試しながら、自分や家族に合った「災害食」を探りたい。

アウトドア用品を生かす

キャンプ用コンロや携帯浄水器、小型固形燃料を使って炊飯や蒸し料理などができる人気の飯ごう「メスティン」――。東京・銀座の石井スポーツマロニエゲート銀座店に9月末まで設けられるコーナー「防災アウトドア」では、ライフラインが停止する中、在宅避難で役立ちそうなグッズが売られ、関心を集める。

売り場担当の酒井秀彰さんは「防災を難しいと感じる人は多いが、アウトドアの道具を使うことができれば、役立つ。コロナ禍でアウトドアへの関心が高まっている今こそ、災害への備えも考えてみては」と勧める。

写真説明:アウトドアで人気のメスティン(飯ごう)は防災グッズとしても関心を集める

アウトドア用品メーカー「モンベル」もサイトで、アウトドアの道具や知識を生かした備えを提案。一例として、備蓄用の食品を、登山で使うコンロやガス缶と一緒にまとめ、ザックなどで保管しておくことを挙げる。アウトドア用品はコンパクトに作られ、自宅でも場所を取らない。

卓上カセットコンロやペットボトルの飲料水があれば、ガス停止や断水時でも、台所などに残った食材を使って食事を作れる。冷蔵庫のものは停電すれば傷みやすくなるため、早めに使いたい。ジャガイモなど常温保存のものは後からでいい。

防災士の佐藤美嶺さんは、食品を食べたら買い足すローリングストック(回転備蓄)で、レトルト食品のほか、トマトやコーン、マッシュルームなどの缶詰を常備しておくよう助言する。「レトルトの味が濃くても、野菜類の缶詰を混ぜると食べやすくなり、子どもにも向いている」

栄養考えて備蓄

栄養バランスにも留意したい。農林水産省がサイトで公開する「災害時に備えた食品ストックガイド」では、「災害直後は炭水化物ばかりになりがち」と注意を促す。たんぱく質を取るため、ツナやサバ、焼き鳥などの缶詰の備蓄を提案。野菜や果物不足の対策として、常温で日持ちする野菜を多めに買い置いたり、野菜ジュースやドライフルーツを常備したりするといいという。

栄養に配慮したレシピを提案する動きも出てきた。福岡県水巻町は3年前から、九州女子大と共同でレシピを開発。切り干しダイコンや乾燥ワカメなどの乾物を使ったナムルのほか、野菜ジュース入りのスープなどがあり、2019年10月の防災イベントで200食を振る舞って好評だった。レシピは町のサイトでも公開している。

写真説明:福岡県水巻町で昨年10月に開かれた防災イベントで、栄養に配慮した災害食を作る女子大生ら(提供写真)

こうした災害食は、日頃から試しに作っておくことが大事だ。

防災システム研究所長の山村武彦さんは、「在宅避難生活訓練」を勧める。2~3日間、電気やガス、水道を使わず、カセットコンロなどで暮らす訓練だ。

同じものばかり食べると飽き、メニューにメリハリを付ける重要性に気付くかもしれない。訓練を踏まえ、備蓄量を再検討することもできる。

「ガスや水道の復旧まで想定以上の時間がかかっても、事前の経験があれば、精神的な余裕を持って暮らし続けられます」と助言する。

◆災害食3か条
▽傷みやすい食材から
▽栄養バランスも考慮
▽事前に調理を体験しておく

(読売新聞 2020年9月18日掲載 「防災ニッポン 地震・在宅避難」③)

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