危険な状況下で孤立しかねない
地震などの災害時、障害者は危険な状況に置かれ、孤立しかねない。逃げ遅れを防ぐため、円滑な避難の手助けや避難所での受け入れなど支援体制づくりが不可欠だが、十分とはいえない。地域のつながりが希薄化する中、在宅避難なども視野に入れ、障害者自身が自分でできることをする「自助」の力も高めておきたい。架空のシナリオで考える。
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シナリオ1 外出中に地震が発生
花子(40)は10年前に交通事故にあい、足が不自由だ。車いすを使用しており、今は東京都内のマンションで1人で暮らす。平日は会社員として働き、趣味はカフェ巡りだ。
休日の昼下がり、花子は近所で見つけたおしゃれなカフェで、大学時代からの友人女性(40)とお茶を楽しんでいた。花子がケーキを口にした瞬間、突然、強い揺れが襲った。コーヒーカップや店内の照明などが激しく揺れる。花子は頭上からモノが落ちてくるかもしれないと感じ、とっさに「危ない。頭を守って!」と大きな声をあげ、友人に注意を促した。友人は、すぐに横に置いてあったハンドバッグで頭を覆った。
花子のバッグは車いすの後ろにかけた状態だ。テーブルの下に隠れることもできない。手で頭を覆うのがやっとだった。ようやく揺れが収まった。幸い、2人にけがはなかった。店内を見渡すと、奥の棚やあちこちのテーブルから、グラスや皿が落ちて割れている。店員が右往左往する姿が見えた。
「家は大丈夫かな? とりあえず1回帰ってみようかな」。花子がこう言うと、友人も飼い猫のことが心配だと不安そうな表情を見せた。2人は店を出て、「何かあったら連絡し合おう」と約束を交わし、別れた。花子は自宅のあるマンションに戻り始めた。
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