危険な道路損傷の早期発見を支援する「ドラレコ・ロードマネージャー」

Sponsored by 三井住友海上火災保険

インフラの老朽化による維持管理コスト増大や担当者不足が問題に

高度成長期に造られた道路や橋など、インフラ(社会基盤)の老朽化が社会問題となっている。国の試算によると、それらの維持・更新には2054年度までに総額547兆円かかるとされ、適切な対応が求められている。そうした中、三井住友海上火災保険が2021年12月から始めた「官民学連携DX(デジタルトランスフォーメーション)によるAI道路点検サービス ドラレコ・ロードマネージャー」が注目されている。ドライブレコーダーで撮影した道路の映像を人工知能(AI)で解析し、損傷箇所を自動で割り出すシステム。老朽化した道路が増える一方、整備を担当する自治体職員は減少傾向にあり、コスト削減を図りながら、人手不足を補う先端技術として複数の自治体で活用が進んでいる。

日本では1960~70年代にインフラ整備が全国的に進んだ。ところが、コンクリート製の建造物は50年以上経過すると、老朽化が目立ち始め、補修や更新などの維持管理が欠かせなくなる。特に道路は、私たちの生活に及ぼす影響も大きく、その多くが地域の自治体によって管理されている。全国の道路延長総距離約120万キロメートルのうち、84%が市町村道だからだ。それらを管理するのが各市区町村だ。

もっとも近年、維持管理にかかるコスト増大や担当者不足が深刻な課題になっている。国土交通省によると、全国1741の市区町村で道路の点検や補修を担う職員は2005年に計10万5187人いたが、2019年には計9万769人と14%減少。そのうち448自治体では土木部門などの技術職員が一人もいなかったという。少子高齢化の進む自治体では、人材不足に加え、老朽化した道路の維持管理にかかる十分な財源を確保することも難しくなっている。三井住友海上保険が22市区町村に対し、道路巡視にかかる人手やコストを独自に調べたところ、年間のコストが1800万円~1億円で、巡視にも週3.1人が当たっていた。

また、住民からの通報も1日平均で12件寄せられ、自治体のスタッフが少ない予算と人員で道路の維持管理に当たっている実情が浮き彫りになった。「マンパワーが絶対的に不足していて、実際は市民からの通報があるまで、道路の損傷に気づかない場合が多く、維持管理も受け身の姿勢になってしまっている」と漏らす自治体の職員も。

こうした道路の損傷が事故につながるケースも増えている。2020年度は年間2000弱の道路関連事故が発生。中には道路の整備不良が原因で交通事故が発生し、行政の管理責任を追及する訴訟に発展したケースも。国交省によると、建築後50年以上になる道路インフラは2033年までに6割を超す見通しで、維持管理のコストを減らすためには、従来の「事後保全」から「予防保全」へ転換することの必要性も指摘されている。

DXで課題解決を目指す三井住友海上

こうした状況を受け、三井住友海上火災保険では2019年に行ったビジネスアイデアのコンテストで提案されたドライブレコーダーを活用した道路巡視サービスを2021年末から自治体向けに事業化。企業や自治体などの車両に搭載された同社のドライブレコーダーの映像を、ドライブレコーダーに搭載した東京大学発のスタートアップが開発したAI技術を用いて分析。道路の損傷状況を高精度に検出することができ、さらにその情報を管理画面の地図上に示すことができるため、一元的な管理が可能になった。

ドライブレコーダーを活用した道路巡視サービス

「このサービスのメリットは、ドライブレコーダーが道路巡視の目となって、危険箇所を早期に見つけ出すことができ、低コストで道路状況を把握できること」、とこのサービスを担当する三井住友海上火災保険ビジネスイノベーション部の堀野正臣課長は話す。さらにデジタル技術を用いて業務を効率化するDXを国が推進していることもあって、自治体のDXへの取り組みとしても注目されるようになっているという。

AIが認識した道路の損傷箇所は、地図上にピンで示される。それをクリックすると損傷の状態を写真で確認することができる。現在はポットホール(路面のくぼみ・穴)に加え、様々な状態のひび割れ、そして横断歩道の白線のかすれなどを検出することが可能だ。損傷箇所を選べば、瞬時にレポートを作成することができ、それを道路保全事業者と共有することができる。また、路線ごとの損傷箇所の数を集計し、損傷の程度を色分けして可視化することによって、担当者の勘に頼るのではなく、客観的で効率的な修繕計画を立てやすくなるという。

もちろん、AIによる損傷箇所の検知にも限界はある。例えば、水たまりになった場所や雪に覆われた道路などで、損傷を検知できないケースもある。人間なら容易に認識できる場面でも、AIは初めて遭遇するパターンを認識できないこともあるという。それでも実証実験に参加した自治体の約8割が「目視による巡視と同等以上」と回答。コストも自治体の人口や道路延長距離などによって変わってくるが、初年度は165万円からサービスを提供することも可能だという。「本サービスの利用自治体が増えれば、スケールメリットが増し、より低価格でサービスを提供することができます」と堀野課長は話している。

ドラレコ・ロードマネージャーについて詳しくはこちら(三井住友海上公式サイト)

AIによる損傷箇所の検知

山梨県北杜市が「ドラレコ・ロードマネージャー」の実証実験に参加

山梨県北西部に位置し、2022年9月、このサービスの実証実験に参加した北杜市で道路を管理している道路河川課の由井課長もその使い勝手を評価する。「ドライブレコーダーが認知した危険箇所を、事務所で写真を通して状態を確認できるのが助かる」と由井課長。

北杜市は2004年に明野村、須玉町、高根町、長坂町、大泉村、白州町、武川村が合併して誕生。さらに2006年に小淵沢町が北杜市に合併した。人口は約4万6000人で、場所によって標高差が大きく、周囲を八ヶ岳連峰、南アルプスなどの山岳景観に囲まれ、高原リゾートなどもあり、避暑などに訪れる観光客も多い。近年は東京から電車で、2時間程度で行けるため、移住者も増えているという。冬場は雪が積もり、道路も凍結する。市内の市道延長総距離は約1089キロメートル、北杜市の面積は東京23区とほぼ同じ大きさ。それを市役所の道路河川と合併した旧町村にある八つの支所のスタッフが維持管理に当たる。年間の維持管理費は約5000万円で、補修を行っている。

山梨県北杜市

「毎日、道路の巡視は行っていますが、人材確保とコストが壁になって、十分な維持管理を行うのは難しいのが現状」と由井課長。日常の管理に加え、2022年夏から秋にかけてのゲリラ豪雨や線状降水帯による道路損傷も深刻だったという。そんな時に、三井住友海上と地方創生取組について連携を組む山梨中央銀行を通じてドラレコ・ロードマネージャーのサービスを知り、2022年9月、試験的に1か月導入。「危険箇所を写真で確認でき、現場へ駆け付ける必要がなくなったのが助かりました」と由井課長は話す。写真を見て、危険であれば、最寄りの支所に連絡して情報を共有。補修を行うかどうかの判断を含め、迅速に対応できるようになったという。

実際の運用を担当した三井住友海上火災保険の吉川支社長代理によると、サービスを導入した1か月でドライブレコーダーを搭載した49台の車が稼働。それで約3500件の道路情報が集約された。吉川支社長代理によると、それによって北杜市の約3割の道路をカバー。3か月あれば、ほぼ市内全域の道路状況をカバーできるという。

市でDXを担当する未来創造課 皆川課長も、「高齢者を中心に『デジタル』というと敬遠する方が多いのですが。今回のドラレコ・ロードマネージャーの試験的な導入は、行政でデジタルを活用するメリットを理解してもらうよい機会となりました」と話す。情報がデジタルで集積されていくので、客観的な情報として外部の人にも状況を説明しやすくなったともいう。

左から道路河川課 小池担当・由井課長、未来創造課 皆川課長

また山梨県内の企業で、美容サロンのサポートを行うBE.ナショナル株式会社は、従業員の事故防止、および自社の自動車事故削減など万が一に備えて、三井住友海上が提供する「F-ドラ」のサービスを導入している。今回、北杜市が行った実証実験に協力をしたことについて、社長の中原氏は、「ドライブレコーダーを設置した社用車が日常の営業活動を通じて市内を走行しているだけで、インフラの維持管理や道路保全に貢献できていることは画期的なシステムであり、今後も県内で同様の事例があれば、協力していきたい。」と話す。

※F-ドラ:三井住友海上専用のドライブレコーダーやインカメラで「事故緊急時のサポート」「事故防止取組のサポート」「運行管理のサポート」を行う企業向けのドライブレコーダー・テレマティクスサービス。
F-ドラについて詳しくはこちら(三井住友海上公式サイト)

導入後に見えた課題とこれからの可能性

もっとも、サービスへの注文もあるという。実際の道路管理は路面の補修だけでなく、道路両脇に育つ樹木の枝の剪定も大きな割合を占めるという。「ドライブレコーダーで路上の樹木の茂り具合も判定してもらえれば、剪定するタイミングなど作業にかかる労力が大幅に軽減される」と由井課長。同市ではこのサービスの本格的な導入を検討しているが、コストと導入効果がポイントになるようだ。「導入に当たって、従来よりもこれだけ予算を抑えられ、かつ作業も効率的になってということを示す必要があります。コストはできる限り抑えつつ、それ以上に業務効率や品質を向上させなければなりません」

こうした声に、堀野課長は「道路の維持管理業務は、自治体ごとに点検頻度、補修基準、方法・体制が異なっているため、一概に導入効果を示しにくい。そのため、まずは試験的に導入いただき、既存のオペレーションに組み込めるか、コスト低減・品質向上といった効果は見込めるか、という観点で、地域ごとに確認いただいている」と話す。今後も危険な損傷の早期発見による交通事故の削減を目指し、AIによるポットホールの大きさ推定や損傷発見時のアラート機能の拡充など、自治体からの要望にきめ細やかに応えていきたいという。ただ、現在はこの事業を持続可能なビジネスと育ていくことを三井住友海上火災保険では重視している。「官民学の共助によって道路管理業務を効率化できる点が評価され、第六回インフラメンテナンス大賞・優秀賞(国土交通省)やgood digital award・防災インフラ部門最優秀賞(デジタル庁)といった賞を受賞した。より多くの自治体に、こうした取り組みやサービスの存在を知ってもらいたい。」と堀野課長。

官民学が一体となったDXの取り組みとしても、大きな可能性がありそうだ。成熟期を迎えた日本を、一般に普及した最先端の技術を応用してメンテナンスしていく時代を迎えている。そうした取り組みを三井住友海上火災保険の「ドラレコ・ロードマネージャー」が象徴しているのかもしれない。

三井住友海上公式サイト

無断転載禁止

この記事をシェアする

新着記事

公式SNS